「EEMコレクション」のアフリカの仮面や神像=2025年3月28日、大阪府吹田市、筒井次郎撮影

 1970年の大阪万博では、芸術家・岡本太郎が手がけたテーマ館の「太陽の塔」の地下に、世界中から収集した民族資料(民具)が展示された。当時の資料と国内の民具を紹介する特別展が、万博の会場跡地に立つ国立民族学博物館(みんぱく、大阪府吹田市)で開かれている。

 特別展「民具のミカタ博覧会――見つけて、みつめて、知恵の素(もと)」。民具を人の手によって製作された生活全般にかかる用具と捉え、道具のほか、祭礼に使う仮面や神像も並ぶ。展示数は851点にのぼる。

 このうち海外の民具147点は、「日本万国博覧会世界民族資料調査収集団(EXPO’70 Ethnological Mission、略称EEM)」が68~69年、世界の47カ国・地域を旅して集めたものだ。梅棹(うめさお)忠夫(後の初代みんぱく館長)ら平均年齢30歳の若手研究者ら約20人が参加した。

 岡本は、塔の地下空間を「過去・根源の世界」と位置づけ、「人類の原点」として世界の民族資料の展示を構想した。ケースではなく「むき出しの展示」にするため、博物館から借りることは考えず、新たに収集することになった。のちに2500点の資料はみんぱく(77年開館)へと寄贈され、EEMコレクションと呼ばれる。

 特別展の会場ではまず、先入観を持たずに民具をよく見てほしい。素材や模様に着目し、作った手間やどう使いこなすかを探る。そうした見方を意識すると、様々な造形の民具をより深く観察できるという。

 アフリカ内陸部のウガンダの酒壺(さかつぼ)は、中央に大きな穴、その周りに九つの穴が開いている。まるでタコの吸盤のようなデザインだ。酒席で壺の周りに車座になり、穴に長いストローを挿して一緒に飲むのだそうだ。

 アメリカ先住民が使った雪の…

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