夢洲から
大阪・関西万博の会場で、大阪人の心をときめかせる値切り交渉が繰り広げられている。
中東の国、イエメンの物販コーナー。青や緑、ピンクなど色とりどりの石を埋め込んだ指輪や首飾り、コーヒー、ハチミツと様々な特産品が並ぶが、ほとんどの商品に値札がない。
そして、スタッフの多くは日本語が話せない。買いたい場合は、英語の「ハウマッチ?(いくら?)」などから。スタッフが「翻訳機」と称する電卓で値段を示してきて、交渉が始まる。
母国では値切りは当たり前だといい、攻防の末に安く買える時もある。SNS上でも「大阪人の値切り魂に火をつけている」などと話題を呼ぶ。
ニュースで知るイエメンは、内戦が続く国。空爆の映像をよく目にし、日本の外務省も全土に退避勧告を出している。
ただ、ここに漂うのはにぎやかで、ほがらかなバザール(市場)の雰囲気。スタッフのアブドゥルサラム・アリさんは「値札がないから生まれる会話もあって、楽しいですよ」と笑う。
うまく英語が出てこずに日本語で「もっとまけてよ!」という人とも、自然と会話を続けるスタッフたち。「良い物を安く」の精神に国境はないな、と感じた。そしていつか、イエメンのバザールに行ってみたくなった。
◇
世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。