岡山県津山市内の古墳から出土し、所在がわからなくなっていたという「三角縁神獣鏡」が昨年11月発見され、同市の津山郷土博物館の特別展で公開されている。約60年ぶりの「里帰り」となり、考古ファンの目を引いている。特別展は15日まで。
特別展は「考古資料は語る!美作津山の古墳文化」と題され、埴輪(はにわ)や須恵器など70点を展示し、この地域の古墳文化を紹介している。
展示の目玉となっているのは、4世紀後半の田邑丸山2号墳(同市下田邑)から出土したとされる直径21.6センチの三角縁神獣鏡だ。同館によると、1960年ごろに盗掘被害に遭うなどして、長らく所在不明になっていたとされる。
ところが、昨年11月、京都府であったオークションに出品されているのが確認された。旧市史に掲載されていた写真と一致していたという。同志社女子大学の山田邦和特任教授が散逸を防ごうと入手し、同館が今回、それを借り受けて公開に至った。津山市内で唯一存在が確認された三角縁神獣鏡で、大きさや模様が同じ神獣鏡は、他に広島県福山市や兵庫県芦屋市、大阪府枚方市などで7例が確認されるという。
美作地方の古墳研究は、明治期の1873年に建てられた津山市日上の古冢碑までさかのぼるという。碑文には開墾時に鏡などが出土したことが、漢学者によって記されている。特別展では、古冢碑や戦後間もない時期の古墳調査、東京国立博物館などに収蔵された考古資料などにスポットをあてて、古墳文化をひもといている。
小郷利幸館長によると、津山には美作地方で最古の前方後円墳の一つ、日上天王山古墳(津山市日上)や、同地方で最大の前方後円墳の美和山1号墳(同市二宮)があり、陶棺という棺おけが普及するなど独自の文化圏をつくっていたことがうかがえるという。前方後円墳などの首長墳の多くは一帯を流れる吉井川と支流の流域に分布し、陸路では少なくとも弥生時代には畿内や山陰から物資が流入していた状況が出土遺物からうかがえるという。
特別展では、奥の前1号墳(同市油木北)で出土したよろいの一種「竪矧板革綴短甲(たてはぎいたかわとじたんこう)」も呼び物の一つだ。鉄板を革ひもで結びつけていたもので、国内での類例は、大阪府茨木市、甲府市の2例となっており、貴重だという。また、長畝山北9号墳(津山市国分寺)出土の水などを注ぐため使われたという須恵器(子持はそう)や日上畝山58号墳(同市日上)出土の人物埴輪の造形もユニークだ。
会期中は12月9日が休館。入館料は一般300円、高校・大学生と65歳以上200円。問い合わせは、津山郷土博物館(0868・22・4567)へ。