三重県内公立学校教員の採用試験で、今年度の受験者数が記録が残るこの32年間で最少だったことがわかった。民間企業の採用選考が早まるなか、県教育委員会は試験を例年より1カ月前倒ししたが、受験者減に歯止めはかからなかった。

 県教委によれば、来年度採用に向けて今年度は6月15日に1次試験、7月に2次試験(技能・実技、論述、面接)があり、8月30日に合格発表があった。

 文部科学省は、小中高校などの教員の人材を確保するため、6月16日を1次試験の目安として検討するよう全国の教育委員会に要請していた。

 東海3県と名古屋市はこれまで1次試験日を合わせており、文科省の求めに応じ、今年度は1次試験を例年より1カ月間前倒しして6月15日とした。

 全国で受験者数は年々減る傾向で、三重県も同様だ。県の今年度の受験者は1843人(小学校教諭希望の大学3年対象の特別選考を除く)だった。記録が残る1993年度以降、2013年度には3092人の受験者がいたが、今年度は最少だった昨年度より214人減り、初めて2千人を割った。

 2次試験合格者は548人で、倍率は3.4倍だった。校種別などの倍率は、小学2.3倍、中学3.6倍、高校5.3倍、特別支援学校3.4倍、養護教諭10.0倍、栄養教諭6.8倍だった。中学家庭科は採用見込み約4人に対して受験者3人(合格者2人)だった。

 01年度採用は合格者数が157人と少なく17.4倍あったが、来年度採用は最も低い倍率の広い門だった。

 前倒し実施について、福永和伸県教育長は昨年7月の記者会見で「民間がどんどん決定が早くなっていくなかで、少しでも挽回(ばんかい)できるかなと思っている。どの程度効果があるかわからないが手を打たないといけない」と述べていた。

 県教委は前倒しの結果について、「単年度だけで判断できない」とする。受験者数が前年より減ったことについて、同じく前倒しした近畿の府県市と試験日が重なり、受験者が併願できなくなったことなどを理由に挙げている。

 来年度も、今年度と同じ時期に採用試験を実施する。民間企業の早期囲い込みの動きは活発で、今後については検討する。「採用試験の準備や大学の教育実習の日程との調整などが課題」(教職員課)という。

 県教委は教員確保のために、高校生や大学生に教職の魅力を伝える説明会を開いたり、教員の働き方改革を進めたりしている。教職員課の山本エリ班長は「何よりも『教員になりたい』と思ってもらうことが大切だ」と話している。

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