いっさい感情を表に出さず、忖度(そんたく)なしに淡々と職務を遂行する。その顔つきは、まるで「能面」のよう……。テレ東系のドラマ「能面検事」(金曜夜9時)で上川隆也さんが演じるのは、そんな異色の検事だ。これまでも様々な役どころを演じてきた上川さんだが、今回も含めその「役作り」で意識していることを聞くと、意外な答えが返ってきた。
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――今作は中山七里さんの小説が原作です。中山さんの作品にはこれまでも出演されていますが、今作で特に難しさ、やりがいを感じている部分はどんなところですか。
中山先生の作品は、とにかくストーリーが魅力的で、最後まで手を止めることなく読み進めてしまう力強い作品ばかり。
今回もそうした傾向にたがわず、手を止められなかったのが事実ですし、難しさというよりは、自分が魅せられた作品を演じられることへの喜びの方が強いです。
今回演じる不破俊太郎という男は、これまで演じてきた(中山さんの)他の作品と比べても、個性のとても強いキャラクターですので、それを想像、体現していく面白みを、むしろ強く感じています。
と同時に、作品の魅力をどこまでドラマとしてお伝えできるかには、注力したいと思いますし、それが何よりの課題だと思っています。
――不破はどんな人物でしょうか。
とても人間性にあふれた人物だと思います。
当然、彼も生まれ落ちた時から表情のない人間だったわけではなくて、それまでの経緯や経験を踏まえて、彼が選択した生き方、手段なんですね。
それを選択している時点で非常に人間くさいと思いますし、彼が解決していく一つ一つの事件の中に、表情には出さない彼の思いが必ずある。
大阪地検という大きな組織の中でエースと言われながら、誰もが選ばない道を選んでいく。それも十分に人間的だなと思います。
――「能面」と呼ばれるほど表情の読み取れない不破を演じるにあたり、考えていたことは。
語れば語るほど、こういうふうにしてやっていますという、内情の披瀝(ひれき)が気恥ずかしいのですが、少なくとも僕が、原作または脚本を読ませていただいたうえで感じた彼のキャラクターを、どこまで体現していけるのか、ということが何より楽しみではあるんですね。
能面という言葉をどこまで咀嚼(そしゃく)できるか。彼自身、じゃあ何も感情がない人間かというと決してそんなことはないわけで。そこの多重構造を意識しながら演じてはいます。
彼を「表情のない男」という一文に押し込めてしまうのではなく、彼とて一人の人間であり、なにがしかの思いがあって、事件や人々に相対しているということは、ベースにおいておきたいと思っています。
――事務官の惣領美晴を演じる吉谷彩子さんとは、どのようなコミュニケーションをとっていますか。
吉谷さんがとても懐の深い役者さんですので、いろんなことを試せています。何でも言い合えますし、何でも試せて、ビルド&クラッシュを常に繰り返していける。
テストではこうやったけど、本番ではこうやってごめんね、いや全然楽しかったです、という会話が常に交わされているような。そういう意味で、闊達(かったつ)な現場です。
――共演者の大西流星さん、観月ありささん、寺脇康文さんについてはいかがですか。
大西さんとは今回、ドラマと…