上皇さまが昭和天皇の「玉音放送」を聞いた建物として知られる栃木県益子町の宿泊施設「ましこ悠和館」で、従業員が盗撮目的でカメラを仕掛けた疑いで逮捕される事件があった。施設は当面の間、新規の宿泊予約を休止するとしている。
栃木県警真岡署などによると、栃木県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されたのは、施設の運営管理を受託している第三セクター会社員の男(44)。12日午後9時半ごろ、施設の脱衣所に盗撮する目的で小型カメラを設置した疑いがある。浴場の利用者がカメラに気づき、関係者を通じて110番通報した。男は13日に逮捕され、容疑を認めているという。
受託会社の社長を務める坂入武司副町長は「皇室とも縁のある歴史的な施設でありながら、このような事件が発生し、信頼を大きく損なう結果となったことは、経営者として痛恨の極み。責任を痛感している」とのコメントを発表。朝日新聞の取材に「信頼を取り戻せるように様々な方策をとっていきたい」と述べた。
施設は宿泊予約を休止し、館内の安全管理や従業員教育の強化といった再発防止策に取り組むとしている。すでに宿泊予約をしている客には個別に連絡し、意向を確認するという。
同館は1882年、栃木県日光市で「南間ホテル」として創業。皇太子だった上皇さまが学童疎開で滞在した。その後、益子焼の窯元が同町に建物を移築し、町へ寄贈。宿泊もできる施設として、2019年に開館した。