Smiley face
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「踊りつかれて」を刊行した塩田武士さん

 不倫をした芸能人に対し、SNSに大量のコメントが投稿される。匿名のよろいをまとい、デジタル空間に放つ言葉の先には、生身の人間が実在していることを、忘れていないか。正義感の奥にあるのは、征服欲なのではないか――。私たちは、SNSに踊らされ、踊りつかれている。作家の塩田武士さんは、「踊りつかれて」(文芸春秋)で現代社会に警鐘を鳴らした。

 《SNSの現状と向き合ってきた》

 「SNSは短時間で、白と黒を表出しようとします。言った者勝ち、声の大きい者勝ちで、より面白いものや過激なものに流れていって、いつの間にか軸がゆがんでいってしまう怖さがある」

 「自覚なく、過激なことを言ってしまっている。過激な意見が、集団極性化によって正義になります。そして、正義感の奥には、相手や古いものを打ち負かそうとする征服欲があり、支配欲につながっている。二次元での支配構造を作中で書いていますが、これは、〝フリック入力一つ〟の支配欲と、源流ではつながっているんじゃないかな」

 「だから、過剰さを放置したり、人間には矛盾や不完全さがあるのに作為的な完璧さを求めたりすることは、やはり危険。それは、相互監視による萎縮を生むんですよね」

《2018年からSNSに対する怒りや違和感をメモし続け、こうしたことを考えてきた》

「このままでは亡くなる人が増える」

 「18年に、誤報をテーマに…

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