不動産業だけど、日曜日と祝日は休み。毎月、会社でカイロプラクティックを受けられる。有給休暇は1時間単位でとってOK。こんなハッピーな環境を実現して、ホワイト企業ランキングで全国トップに入った会社が山形県酒田市にある。実現させたのは、やんちゃだった社長の若き日の苦労と、採用の難しさだったという。
不動産管理・仲介などを手がける「東洋開発」は、最上川の河口近くにある1994年創立の会社だ。社員は20人。一見、どこにでもある小さな事業所だが、働きやすい環境づくりをとことん追求している。
たとえば、有給休暇は1時間単位でとれるだけでなく、連絡はLINEWORKS(企業向けLINE)に書き込むだけでOK▽子育て・介護のため、1カ月単位で時短勤務できる▽子どもが発熱した時の在宅勤務や子連れ出勤も可▽地域活動への費用補助――といった制度を整備してきた。
風通しがよく相談しやすい職場づくりにも努める。櫛引柳一社長(48)は毎月、社員全員と1対1で面談する。業務の改善提案のほか、抱えている悩みも丁寧に聴くという。
部屋探しなどに対応するため、土日祝日は営業するのが当然の業界にあって、土曜日は完全予約制、日曜日と祝日は定休日にした。平日も完全予約制をとっている。
毎月無料のカイロプラクティック、誕生日プレゼントも
水曜日だけが定休日だった頃は、求人に苦労した。週末の休みにくさなどが敬遠され、応募がゼロだった年も。売り上げ減少を覚悟の上で、まずは予約制を導入、昨年8月からは思い切って日祝も定休にした。結果、売り上げへの影響はほとんどなく、給与の見直し効果もあって、採用がしやすくなった。
現在は水曜日と日祝が対外的な定休日。社員は水曜日を含む平日に勤務し、土曜日は予約に応じて少数が出社する。日祝は休める。休みの日に家族や友人と過ごせると、社員からも好評だ。
さらに、会社で無料のカイロプラクティックを毎月受けられ、誕生日プレゼントもある。
ホワイトさ認められ全国1位 社員「ずっとお世話になりたい」
厚生労働省が取り組みに熱心な企業を認定する制度のうち、子育て支援の「プラチナくるみん」や、女性活躍の「えるぼし」、若者の採用・育成の「ユースエール」などを獲得。こうした取り組みを評価し、働き方改革を支援する「安全衛生優良企業マーク推進機構」(東京)のホワイト企業ランキングで昨年、全国1位に選ばれた。今年5月版でも、新潟と静岡の法人に続く3位だった。
東京からUターンして転職した斎藤知恵美さん(35)は子ども2人の産休・育休をとり、カイロプラクティックには家族で参加することもある。「急に休んでも『大丈夫だよ』とカバーしてくれる。会社の雰囲気にホワイトさを感じます」
入社18年目の高橋まみさん(42)は、3人の子どもの授業参観などの際に1時間単位で有休をとり、社長面談では悩みを聴いてもらう。「ここより働きやすい会社はないと思う。ずっとお世話になりたい」
それにしてもなぜ、こんなに徹底しているのか。原点は櫛引社長の若い頃の経験にある。
高校中退、暴走族、ボクサー経験
その半生は、波乱に満ちてい…