認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの高橋公理事長=2025年5月7日、東京・有楽町、豊平森撮影

 移住の関心が高まり続けている。全国の自治体と連携する認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京・有楽町)の昨年の相談件数が6万1千件超となり、4年連続で過去最多を記録した。なぜいま移住なのか。同センターの高橋公理事長(77)に聞いた。

 ――現役世代の移住への関心が高まっています。

 かつては東京に夢がありました。いい大学に入って一生懸命頑張れば、ある程度の生活ができました。ところが、近年は非正規雇用が増えて格差社会となりました。東京で先が見えない人たちが地方に目を向け始めています。

 一方で、ある程度豊かな人たちの間では、二地域居住として週末の田舎暮らしも盛んです。東京から1時間半ぐらいの軽井沢や宇都宮、前橋、小田原あたりは人気です。

  • 移住と言えば現役世代、子育て移住も増 重なるショック変えた価値観

 ――若者の意識も多様化しましたね。

 2008年のリーマン・ショックで、多くの学卒者が希望する職に就けませんでした。同じ08年度に農林水産省が都市部の人材を農村に送り込む「田舎で働き隊!」という若者向けのプログラムをつくりました。翌年度には総務省が「地域おこし協力隊」を立ち上げました。あの辺りから、現役世代の移住希望者が増えてきました。それまではセンターの利用者の7割以上が50代以上でした。

 ――自治体の受け入れ態勢はどうでしょうか。

 14年に増田寛也・元総務相ら有識者による「日本創成会議」が、市町村の半分以上は「消滅可能性都市」になると指摘した「増田リポート」の衝撃が大きかった。政府は地方創生に力を入れ始め、センターの会員自治体数は一気に増えて、移住者受け入れの動きが広がりました。

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記事の後半では、地方への移住に対する高い関心が続いている理由や、移住で失敗しないための心得について、長年移住に関わり続けてきた立場から高橋さんが解説します。

「拠点都市から地方の流れも」

 ――ふるさと以外の地方へ移住する「Iターン」が相談者の7割を占めています。

 一つは相談者が地方から東京…

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