城アラキさんの妻の淳子さん。愛犬の散歩が日課だった
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それぞれの最終楽章 最愛の妻の死(1)

漫画原作者 城アラキさん

 「何があっても無理心中なんて嫌だからね。後追い自殺もダメ」

 明るい口調の淳子さんの横顔は、穏やかにほほ笑んでいた。いつものようにどこかのんびり、おっとりしていてひとごとのようだ。

 それは2010年1月下旬、遅い午後の出来事だった。僕は二日酔いのパジャマ姿で東京・南青山にある自宅リビングのソファにぐったりとしていると、玄関の鍵を開ける音がした。どこからか帰宅した淳子さんだ。階段をのぼってくる足音がし、声が聞こえた。

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 「ダメみたい。膵臓(すいぞう)がんのステージ4のbで、手術するのも無理だって。助からないみたい」

 僕は頭が空っぽになったまま…

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