樺沢和佳奈、パリへの挑戦 前編
3年前の春、「東京五輪」に参加した。不本意な形で。
群馬県太田市の陸上競技場。東京五輪の聖火ランナーだった樺沢和佳奈(25)は、トーチを片手に小走りし、笑顔でスタンドに手を振っていた。
当時、慶応大4年生。視線の先では、高校時代の恩師や校長先生たちが見守っていた。駅伝の強豪、常磐高にいた頃に毎日のように練習したグラウンドだった。
聖火ランナーには、母に後押しされて応募した。身にまとったのは専用の白い長袖と長ズボン。ゆっくりと走るようにスタッフに言われ、思った。
「思っていたユニホームと違うな。なんでこんなにゆっくり走っているんだろう」
あの表情は作り笑顔だった。
高校時代、東京五輪には選手…