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開校セレモニーに参加した高橋洋平・市教育長(左)と保護者と転入生、校内は明るい色調だ=2025年4月12日午前11時45分、神奈川県鎌倉市、村上潤治撮影
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 不登校になった子どもたちが通うために設立された鎌倉市立由比ガ浜中学校(同市由比ガ浜3丁目)で12日、開校のセレモニーがあり、新入生や転入生、保護者、教育関係者らが参加した。

 同校は文部科学省が指定する「学びの多様化学校(不登校特例校)」で市立御成中学校の分校。県内公立校では、2022年設立の大和市の引地台中学校の分教室以来で、分校の設置は初めて。15日には転入式があり、31人(男子12、女子19人)の生徒が特別なカリキュラムで新たな学校生活を始める。

 対象は不登校や不登校の傾向がある鎌倉市在住の児童・生徒で、市教育委員会によると、開校に際して45人が別の施設で学校の体験をするなどし、面談を受けた上で登校を決めたという。

 「うれしいと思ったのは教室に入れるということ。踏み出せなくて入れなかった教室に入れて、クラスメートと話せて授業が受けられる。とてもうれしい」。近隣の中学から転入する女子生徒(14)が代表として、こうあいさつした。学校に行けても教室には入れなかったという。

 同校では自分のペースで学べるよう、年間の授業時間数を一般の中学校(1015時間)より減らした770時間にする。毎日の登校を基本とするが、生徒の状況に合わせて相談しながら登校のペースを決める。

 制服はなく、市内全域が通学範囲のため登校時間は午前9時半に。「先生」という言葉に抵抗のある生徒もいることに配慮し、先生は「スタッフ」、分校長は「リーダー」という呼称にするという。

 生徒と保護者、学校長らが参加したこの日の開校記念トークでは、3年生の河野文緒さん(14)が「建物がきれい。スタッフも明るい。思ったよりもあたたかい」と笑顔を見せた。

 3年生の母親の八鍬圭さん(43)は「小学校に行けず、親子で沈黙の数年間が続いていた」と振り返り、「この学校にプレ通学した時、何年も見ていなかった娘の笑顔が見られた。楽しみに通ってくれたら」と期待をこめた。

 セレモニー後に取材に応じた女子生徒(14)は、小学2年から不登校だったという。「友達と仲良くなれるか、不安はある。授業を受けるなどの当たり前のことがしてみたい」

 岩田明・分校長(46)は「『学校に通いたい』という思いの尊さを痛感してきた。子どもたちとの信頼関係が最優先で課題でもある。この学校で1人ひとりのいいところをいっぱい探していきたい」と話した。

 鎌倉市の不登校児・生徒は2023年度は小学生161人、中学生221人の計382人。19年度の244人(児童91人、生徒153人)から増えている。トークに参加した松尾崇市長は、「市内にはまだまだ学校に通えない子がたくさんいる。ここがスタート地点で、これからが本当の取り組み」と力をこめた。

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