不良品の土鍋を持つ林茂雄主査研究員=2025年9月4日、三重県四日市市東阿倉川、安田琢典撮影

 土鍋やグラタン皿などの耐熱陶器で国産シェア8割を占める三重県が、産業廃棄物として処分される不良品の循環システム構築をめざしている。目を付けたのは、耐熱陶器の生産量が多い萬古焼に含まれる、ある成分。「都市鉱山」のような可能性を秘めているという。

 県内には萬古焼と伊賀焼の「2大ブランド」があるが、萬古焼の産地として知られる四日市市にある県工業研究所窯業(ようぎょう)研究室によると、萬古焼の耐熱陶器の原材料は、ジンバブエから輸入する鉱石ペタライトだ。ペタライトには、全重量の3.5~4.5%にあたるリチウムが含まれている。

 電気自動車(EV)の世界的な普及などに伴い、リチウムイオン電池の原材料となるリチウムの需要は急激に拡大している。

 一方、萬古焼メーカーが生産する年間約200万個の耐熱陶器のうち、ひび割れがあったり形がゆがんでいたりする不良品は5%程度。重量は120トンにも達し、これらの処理費用は各メーカーの経営に悪影響を与えていたという。

 同研究室は2019年度、メーカーの依頼を受け、不良品の再利用方法の研究に着手する。当初は不良品を粉砕し、新品を焼成する際に混ぜる方法を模索していたが、リチウムイオン電池の需要増もあり、4年後に方針を転換。不良品からリチウムを抽出する実験へと切り替えた。

電池など試作成功、今後の課題は抽出コスト

 リチウムはオーストラリアや…

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