若手音楽家の登竜門として知られる第44回飯塚新人音楽コンクールの予選が3、4の両日、福岡県飯塚市のイイヅカコスモスコモンで開かれる。昨年は、声楽部門で白川憂里亜さん(24)が1位を受賞。母で声楽家の白川深雪さん(55)もかつて受賞した一人だ。世代を経た娘と母の受賞は、それぞれの音楽人生に大きな影響を与えたという。

母に背中押され立った舞台 1位副賞でウィーン留学へ

 「力のある先輩たちが出場してレベルが高い」――。憂里亜さんはこのコンクールに、そんなイメージを抱いていた。2023年は実力不足だと感じて出場を見送った。だが24年は母の深雪さんから「狙いなよ」と背中を押された。1年間、発音や姿勢の美しさを意識して取り組み、自信もついていた。

 予選、本選と進んだ本番の舞台。今まで出せなかった十分な声量の高い音が前へ飛ぶようになった。同じホールで2回歌えたことも大きかった。審査員から「言葉が伝わってきた」と評価された。

 1位に輝いたことで新たな出会いや、出演依頼も増えた。

 この春、東京芸術大大学院を修了。オーストリアとドイツを訪ね、アルプス山脈を望む集落や小川のほとりを歩いた。その町並みやせせらぎを目にした時、音符となって並んだ「音形」が浮かんだ。それは、過去に親しんだ歌曲の音形だった。「そういうことか」。腑(ふ)に落ちた。

 1位の副賞100万円でオー…

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