沼野恭子さん

 食料輸入大国の日本は、世界各国の食材や文化を食卓へ取り入れてきました。食文化に詳しい、東京外国語大学名誉教授でロシア文学者の沼野恭子さんは、ロシアのウクライナ侵攻は食の面でも日本と無関係ではないと指摘します。料理と翻訳の共通点についても語ってもらいました。

  • 戦時下の国から届くハチミツ 甘くない現実、それでも未来のため

 世界の食を学び、取り込むことで日本の食は豊かになってきました。たとえば、1980年代からいまに続くエスニック料理の流行は日本における食の幅を大きく広げています。同時に、食卓を通してアジアの文化を理解できるようになりました。今回の連載のように、日常で口にする食材の背景を知ることは、産地の食や暮らしに関心を持つきっかけになるのではないでしょうか。

 世界の料理を日本に持ってくることは、文学を翻訳することとすごく似ているんです。現地の料理を取り入れるときには、日本人の好みに合わせて食べやすくアレンジする方法と、現地のものをなるべくそのまま再現する方法があります。翻訳もその二つの間を行ったり来たりしてきました。日本人に読んでもらいやすい言葉や文体に置き換えて訳すか、原文の感触をそのままに、できるだけ一字一句訳すか。

 最近、日本ではジョージアの…

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