大阪・関西万博が開かれる今年、音楽で世界の旅へ――。「第63回大阪国際フェスティバル2025」が4月に開幕する。在阪の四つのオーケストラが集う春の恒例「4オケ」では、日米欧の多彩な楽曲が披露される。それぞれの指揮者が意気込みを語った。
♪武満徹 「波の盆」組曲(日本)
♪ブリテン 歌劇「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」(英国)
1970年の万博、心躍った! 世界の名だたるオーケストラが相次いで来日する中、NHK交響楽団の開幕演奏会に鍵盤奏者として参加した時の興奮は、しっかりと覚えている。あれから55年。2025年の万博が迫ってきて、ワクワクしている。
11回目を迎える「大阪4オケ」、私たちは日本を代表する武満徹さんの作品で、私が最も愛する「波の盆」を選んだ。テレビドラマの音楽だが、演奏した英国のオケ団員が大泣きしたほど、涙腺を刺激する名曲だ。
そして英国の作曲家で真の天才、ブリテンの代表的オペラ「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」。
このコンサート、自分自身とても楽しみにしているが、これらの曲をご存じない方にもぜひぜひ聞いていただきたい。
♪萩森英明 「東京夜想曲」(日本)
♪バーンスタイン 「ウェスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」(米国)
大阪・関西万博の開催を記念する特別な年に、「大阪4オケ」として関西フィルと共演できることを大変うれしく思います。今回のプログラムでは、萩森英明さんの「東京夜想曲」を通じて、現代日本の感性と都市の光景を音楽で描きます。そして、バーンスタインの「ウェスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」では、多彩なリズムと躍動感を通じてアメリカの文化を感じていただけるでしょう。
4オケが一堂に会するこの祝祭的な演奏会で、音楽の多様な魅力を存分にお届けしたいと思います。皆さまと、この特別な時間を分かち合えることを心より楽しみにしています。
♪外山雄三 管弦楽のためのラプソディ(日本)
♪R.シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」(ドイツ)
2025年の4オケで大阪交響楽団はR.シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」と外山雄三先生の「管弦楽のためのラプソディ」を演奏します。
前回の4オケでもR.シュトラウスの「ばらの騎士」組曲を演奏しましたが、「大阪響と山下のR.シュトラウス」を皆さまに認知していただきたいという思いを持っての選曲です。
外山雄三先生は、その最晩年に大阪交響楽団の指揮者を務められて大きな足跡を残されました。2024年、先生の作品のみで一晩演奏会を開きました。指揮している僕も驚くような「熱量」をオーケストラから感じました。先生への尊敬と感謝の気持ちがそこにはありました。そんな大阪響ならではの「外山ラプソディ」をお聴きください。
♪久石譲 Adagio for 2 Harps and Strings(日本)
♪ストラヴィンスキー バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)(ロシア)
僕にとって4年ぶりの4オケは、日本センチュリー交響楽団の音楽監督になって最初のコンサートになります。
まずは僕の「Adagio for 2 Harps and Strings」を演奏します。新日本フィルハーモニー交響楽団から委嘱されて、マーラーの交響曲第5番の前に演奏する曲として2023年に作曲しました。
2曲目には、ストラヴィンスキーの「火の鳥」(1945年版)を選びました。他のオーケストラの各プログラムを見たとき、僕はロシア・フランスの作品にしようと思いました。「火の鳥」が初演されたのはパリであり、世界最先端の街からの影響を受けた曲です。楽しんでいただけたらうれしいです。
9月は神尾真由子×センチュリー響 2大協奏曲
バイオリン協奏曲といえば、メンデルスゾーンとチャイコフスキーを思い浮かべる人も多いだろう。9月23日にフェスティバルホールで開催される大阪国際フェスティバルでは、世界で広く愛されるバイオリン協奏曲2作品を、日本センチュリー交響楽団がバイオリニストの神尾真由子を迎えて披露する。
メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲は1845年にドイツのライプチヒで初演された。メンデルスゾーンが28歳のときに着想し、6年かけて完成させたとされ、哀愁に満ちた調べで知られる。ベートーベン、ブラームスの協奏曲とともに、「3大バイオリン協奏曲」と評されることもある傑作だ。
チャイコフスキーのバイオリン協奏曲は1881年にウィーンで初演。当時は酷評を受けたというが、初演で独奏したバイオリニストのアドルフ・ブロツキーが演奏旅行のたびに各国で演奏し、世界で認められるようになった。
神尾は4歳からバイオリンを始め、2007年にチャイコフスキー国際コンクールで優勝した。情念のこもった強靱(きょうじん)な音色と華やかな技巧で、バイオリンの表現力を極限まで引き出す演奏家だ。国内外で活躍する。
大阪府豊中市出身の神尾。豊中を拠点に活動する同楽団との「豊中コンビ」で、フェスティバルにぴったりの華やかな音色を響かせる。指揮者は調整中。
開催概要
◇提携公演「東京都交響楽団 創立60周年記念 大阪特別公演」
4月20日(日)午後2時▽大野和士(指揮)、アリョーナ・バーエワ(バイオリン)▽ショスタコービチ「バイオリン協奏曲第1番」、チャイコフスキー「交響曲第5番」▽S席6500円ほか。1月11日(土)午前10時一般発売
◇大阪・関西万博開催記念 大阪4オケ2025
5月10日(土)午後2時▽大阪フィルハーモニー交響楽団(尾高忠明指揮)武満徹「波の盆」組曲、ブリテン「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」▼関西フィルハーモニー管弦楽団(鈴木優人指揮)萩森英明「東京夜想曲」、バーンスタイン「ウェスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」▼大阪交響楽団(山下一史指揮)外山雄三「管弦楽のためのラプソディ」、R.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」▼日本センチュリー交響楽団(久石譲指揮)久石譲「Adagio for 2 Harps and Strings」、ストラヴィンスキー「火の鳥」(1945年版)
S席1万円、A席7500円ほか。1月11日(土)午前10時一般発売▽協賛:朝日放送グループホールディングス、関電工、サントリーホールディングス、ダイキン工業、大和ハウス工業、高砂熱学工業、竹中工務店、後援:2025年日本国際博覧会協会
◇神尾真由子×日本センチュリー交響楽団 華麗なる2大コンチェルト
9月23日(火・祝)午後2時▽神尾真由子(バイオリン)、指揮者調整中▽メンデルスゾーン「バイオリン協奏曲」、チャイコフスキー「バイオリン協奏曲」ほか
3月発売予定▽協賛:朝日放送グループホールディングス、竹中工務店
◇クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
11月7日(金)
◆会場:フェスティバルホール(大阪・中之島)
◆主催:朝日新聞文化財団、朝日新聞社、フェスティバルホールほか
◆チケットはフェスティバルホール(06・6231・2221、https://www.festivalhall.jp)ほか主要プレイガイドで販売