世界自然遺産と聞けば、多様な生物がくらす豊かな自然をイメージするかもしれない。では、そんな場所で「自然を再生する」と聞いたらどう感じるだろう。
現場は沖縄県の西表島。鹿児島県の奄美大島などと一緒に、2021年に世界自然遺産に登録された。
島を流れる浦内川のほとりにある集落跡には、1969年までは人が住んでいた。当時は、水田で稲作が営まれ、淡水魚や大型の水生昆虫、水鳥などが見られ、カエルなどを狙ってイリオモテヤマネコも姿を現していたという。
ただ、人が去ってから、水田があった場所には草が茂り、開放水面は消え、湿地としての機能は失われていった。
それを回復できないか試みた5年間の環境省の委託事業が2023年度に完了した。20年度以降受託した世界自然保護基金(WWF)は、地元の西表島エコツーリズム協会や研究者とも協力して、年に1、2回、手掘りで池を造成し、変化を見た。
結果は明らかだった。再生に伴って、姿を消していたり、数が減って見つからなくなったりしていた湿地性植物や水生昆虫の姿が確認されるようになっていった。カエルや水鳥もやってきた。
環境省によると、2019年度に32種だった維管束植物は、23年度には44種、21年に13種だった水生昆虫は23年には37種が記録された。農薬などの影響がないせいか、島内の似たような水田環境よりも生き物は豊富だという。
WWFの小田倫子さんは「昨年12月にはさらに大きな池を作ったので、今後もっと生き物が増えることも期待できる」と話す。
西表島を含む、南西諸島の世…