仁和寺の門前で進む高級ホテルのイメージ図(2021年時点)=京都市提供

 世界遺産・仁和寺(京都市右京区)の門前に高級ホテルを建設する計画をめぐり、周辺住民らが京都市に建設の特例許可を取り消すよう求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。植田智彦裁判長は、特例許可を認めた市の判断に裁量権の逸脱はないとして、住民側の請求を棄却した。

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 判決によると、ホテル(客室数67)は地上3階・地下1階、延べ床面積5897平方メートルで、今年8月に完成する予定。第1種住居地域にあり、3千平方メートルを超える大型商業施設は建築できないが、市が特例許可を出していた。

 訴訟で住民側は、「周辺の交通状況が悪化する」などと主張。市側は、「交通量への影響は約1%」などと反論していた。

 判決は、特例許可が不要な3千平方メートル以下で客室数が倍近いホテルが仮に建ったとしても、影響は限定的で、ホテル側が「住環境を害するおそれがない」と評価することが合理性を欠くとはいえない、と結論づけた。また、仁和寺の世界遺産としての価値の保全に関心があるからといって、すべての住民が特例許可にあたって市が意見を聞くべき「利害関係者」に当たるわけではない、とする判断も示した。

 歴史的建造物の近くで高級ホテルを建設する計画をめぐっては、相国寺(京都市上京区)でも住民が市の建設許可の取り消しを求め、昨年に提訴している。

 京都のホテル建設計画に詳しい宗田好史・関西国際大教授(都市計画)は、「反対する住民が世界遺産に奉仕してきた気持ちは分かるが、住民が独り占めしていいものでもない。全住民の合意を得ることは困難だが、急激にインバウンド(訪日外国人客)が増える中、ホテル側もマナー向上を呼びかけつつ、『寺社仏閣に敬意をもって奉仕する上質な体験』を提供できるよう努力していくことが求められる」と話す。

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