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英オックスフォード大ベーリオール・カレッジを訪問した天皇、皇后両陛下。クリス・パッテン名誉総長らが出迎えた=2024年6月28日、ロイター
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 訪英中の天皇、皇后両陛下は28日、それぞれ20代のころに留学経験がある英・オックスフォード大を私的に再訪した。歴代天皇の中で初めて留学した陛下は同大で国際的な視野を深め、忘れられない経験をした。青春の日々を過ごした地への再訪を前に、当時の恩師らは再会を心待ちにしている。

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 陛下は1983~85年、約2年にわたり同大に留学。同大の中で最も古いカレッジの一つというマートン・カレッジで寮生活を送りつつ、テムズ川の水運史を研究した。

 初めての一人暮らしはトラブルがつきものだった。陛下の留学記「テムズとともに」によると、冷たいすきま風が入る部屋で電気毛布が「大活躍」し、初めて出かけたディスコではジーパンをはいていたため入店を断られた。

 留学中は「ヒロ」で通し、英国の警護官がついていたものの、いち学生として振る舞おうとしたという。

 同時期に留学していた大阪大学微生物病研究所の松浦善治特任教授(68)は多くの友人に囲まれ、のびのびと過ごす陛下の姿を覚えている。松浦さんによると、当時日本人学生は数十人しかおらず、「浩宮さま(陛下)がいることはみな知っていた」。日本人の留学生仲間で陛下を誘い、松浦さんが学ぶウルフソン・カレッジの大食堂で夕食を囲んだ。その後もテニスを共にするなど交流を持った。

 「テニスの腕は一流で、ビオラの演奏もたしなみ登山も好むなど多彩。どんな話題にも話を合わせてくれた」と懐かしむ。

 あるとき、陛下がテニスのウィンブルドン選手権の決勝を見に行くと聞いた。人気のチケットをどうやってとったのか尋ねたが陛下は何も語らなかった。後日、テレビ中継で決勝を見ていたらロイヤルボックス(貴賓席)に座っている陛下を見つけたという。

 陛下は街中では日本人観光客との写真撮影や握手に気軽に応じていたという。「英国王室は国民との距離が近い。おそらく陛下は国民との交流について英王室からもじかに学んだのではないか」と話す。

 松浦さんは「オックスフォードでは、美しいメドー(牧草地)で雅子さまとのんびりしてほしい」。

 皇后雅子さまは、陛下と結婚して皇室に入る前の1988~90年、同大のベーリオール・カレッジに所属。外務省の在外研修生として学んだ。

 著名な国際政治学者、アダム・ロバーツ名誉教授(83)は、授業で毎週顔を合わせた皇后さまが、20人ほどのクラスになじみ、精力的に勉学に励んでいた姿をよく覚えている。

 「優れた能力があるだけではなく、ユーモアのセンスもあった。物静かだったが、機知に富んだ発言や活発なやりとりを好んでいた」と振り返る。

 留学中から「皇太子妃候補」と騒がれていた皇后さま。ロバーツさんは一度、皇后さまからメディアの取材について相談を受けたという。

 ただ、「私には何も言わないでください。どこに住んでいるかも、皇太子さまのことも」と返した。皇后さまはただ、笑っていた。

 皇后さまの留学中、生活一般の「チューター」(指導役)を担っていた医学者のデニス・ノーブル名誉教授(87)は、皇后さまが留学を終えた後も交流を続けてきた。日本を訪れる度に連絡を入れると、必ず、「いつでもいらしてください」と返ってきた。天皇陛下とも交流し、10年ほど前には、長女愛子さまにも会った。

 「友人に会うかのように歓迎してくれるのです。両陛下ともに、学生時代の思い出を大事にしているからなのでしょう」

 ノーブルさんは日本における人間関係が「フォーマルな」(儀礼を重んじる)ものであるのに対し、英国では「インフォーマルな」(飾らない)側面を見せてもかまわないこともまた、両陛下は心地よく思っているのではないかと推測する。

 最後に会ったのは、新型コロナウイルスが感染拡大する前。28日の再会は、実に6年ぶりになる。「お元気ですか」。なによりもまず、日本語でそう声をかけたいという。(ロンドン=藤原学思、中田絢子)

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