モンゴルを訪問中の天皇、皇后両陛下は8日午後、首都ウランバートル北部にある日本人抑留犠牲者の慰霊碑を訪れた。雨が降るなか、花輪を供え、約1分間黙禱(もくとう)した。敗戦直後、旧ソ連軍によって連行された日本兵ら約1700人がこの地で亡くなったとされる。犠牲者には一部、民間人も含まれていた。

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 旧ソ連による「シベリア抑留」では一部民間人を含む約60万の日本人が連行され、少なくとも5万5千人が亡くなった。モンゴルには1万4千人が移送され、強制労働に従事させられて1割以上が犠牲になった。こうした抑留の歴史で、天皇が現地で慰霊碑を訪れたのは戦後初めてとなる。

 碑は「日本人死亡者慰霊碑」として2001年に日本政府が建立した。日本語とモンゴル語で「祖国への帰還を希(のぞ)みながらこの大地で亡くなられた日本人の方々を偲(しの)び平和への思いをこめてこの碑を建設する」と刻まれ、慰霊碑前の広場中央には、抑留者の埋葬地の場所が地図で示されている。

 両陛下は駐モンゴル日本国特命全権大使の井川原賢氏の説明を受けた後、慰霊碑に近づき、黙禱した。さらに帰り際、天皇陛下は「もう一度会釈しましょうか」と皇后さまに声をかけ、再び慰霊碑に歩み寄り、深く拝礼した。

 これに先立ち、両陛下は同日午前には、ウランバートルのスフバートル広場で開かれた歓迎式典に出席した。広場に到着後、出迎えた大統領夫妻と握手を交わした。民族衣装姿の児童から花束を受け取り、巨大なチンギス・ハーン像の前では両陛下と大統領夫妻がそろって一礼し、敬意を示した。

 式典にはモンゴルの閣僚のほか、朝青龍さん、白鵬さん、日馬富士さんの元横綱3人も出席し、両陛下と笑顔で言葉を交わした。広場には多くの市民も集まり、「ありがとう日本」の横断幕を掲げたり、日本国旗を手にしたりする姿があった。両陛下は笑顔で手をふった。

 式典会場となったスフバートル広場の周辺には、国会議事堂やオペラ劇場など同国を代表する建物が並ぶ。これらの建設には、戦後、旧ソ連によって連行され、同国で強制労働に従事した日本人抑留者が関わった歴史がある。

 式典の後、両陛下と大統領夫妻は政府庁舎で会見した。大統領は「日本からの様々な支援があったことをモンゴル人は忘れることはない」と伝え、天皇陛下は「今回2人そろってモンゴルの歴史、社会、文化に触れることを大変楽しみにしております」と話した。

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