論説副主幹 山口進
書く文章がどうしても平板になってしまう。そんな悩みを聞くことがあります。では、立体的な文章を書くにはどんな工夫をすればいいのでしょうか。
一つの方法としては、例えば、いま書いてみたいことが、何と似ているのか、何と違うのか、考えをめぐらせると、ヒントが浮かんでくることがあります。
何と何を並べて語りたいと思うのか、あるいは対比させて示したいと思うのかには、その人自身の個性が表れると言ってよいからです。どんな組み合わせを発想するかは、その人固有の認識だとみることもできるでしょう。
今回の題材は、毎月第3月曜日に掲載している「まなび場天声人語 あの日探訪」という欄です。時をさかのぼって天声人語や紙面を紹介しながら、今日の問題意識につなげて考えるコラムです。
小欄でとりあげた天声人語をぜひ読んでいただきたいのですが、「夕焼けの美しい季節だ」と書き出し、夕焼けのひとときだけは(醜い大都会である)ニューヨークにも甘い感傷があった、という思い出と、ドイツの強制収容所生活をつづった「夜と霧」の一節の紹介とが、合わせ鏡のように組み合わされています。
(取り上げた記事へのリンクが文末にあります)
天声人語の筆者はこの約3カ…