たくさんの旅客が利用する瀋陽駅。鄭執さんの作品「森の中の林」には「東京駅はね、瀋陽駅と造りがそっくりなのよ」という登場人物のセリフが出てくる=2024年10月、中国遼寧省瀋陽、金順姫撮影

 中国で、東北地方出身の作家らが手がける「新東北文学」と呼ばれる作品群が注目を集めている。現在の中国の経済不振と、かつての東北の不況を重ね合わせた読まれ方をされているのが特徴の一つだ。日本でも邦訳が出版されたり、関連のイベントが開催されたりしている。

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 舞台は遼寧省瀋陽市。1990年代に起きた未解決殺人事件を軸に、世代をまたぐ人間模様が描かれる。工場労働者のリストラなど、時代背景が色濃くにじむ――。

 双雪濤さんの「平原のモーセ」はこんな内容だ。双さんのほか、「冬泳」「逍遥遊」で知られる班宇さん、「仙症(邦題:ハリネズミ)」を書いた鄭執さんら80年代生まれの作家たちが人気を牽引(けんいん)している。この3人はいずれも瀋陽市出身。黒竜江省チチハル市出身で94年生まれの楊知寒さんも支持されている。

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 こうした東北出身の作家らは「新東北作家群」といわれる。さまざまな作品があってひとくくりにはできないが、地域性を背景に、リストラやレイオフ、国有企業から民間に転じる「下海」など、親の世代の経験や当時の世相が反映された作品が目につく。「平原のモーセ」のドラマ化、「仙症」の映画化といった映像化も相まってファンのすそ野が広がった。

中国の東北地方、かつては先進地域だったのに…

中国遼寧省瀋陽市の繁華街「太原街」=2025年1月、金順姫撮影

 中国では遼寧省、吉林省、黒…

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