米司法省は今年3月、中国の警察機関である公安省の要員が関係したサイバー攻撃事件の起訴状を公表しました。事件では、同省要員や中国のサイバーセキュリティー企業関係者が、米国などに住む中国人らの情報を収集していたとされます。防衛省防衛研究所の後藤洋平、瀬戸崇志両研究員は「公安省は中国の国外でも活動している」としたうえで、「地方機関・企業・個人などからなるネットワークの実態がつかみにくいのが特徴だ」と指摘します。
――どんな事件だったのでしょうか。
瀬戸 米司法省の発表によると、2016年以降、中国企業「安洵信息技術有限公司」(通称I-Soon社)の呉海波CEOを含む同社社員8人と公安省の地方要員2人が共謀し、サイバー攻撃によって米国内外に所在する報道機関や教育機関、宗教団体などから機密情報を窃取した事件です。
窃取した情報は公安省の監視対象になる個人の所在地や渡航先などの把握にも活用されていたとみられます。
24年2月、I-Soon社の内部文書がネットで公開され、中国公安省の様々な地方機関が同社にサイバー攻撃を委託してきた実態が明らかになりました。3月の米司法省による起訴状にも、その内容が複数引用されています。
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ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ350人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。
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