2025年6月30日、インド北部ダラムサラで自身の90歳の誕生日を祝う行事を主宰したチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世(中央)=AP

 ダライ・ラマ14世(89)が2日、亡命先のインドで「輪廻(りんね)転生」制度を存続して後継者を選ぶ方針を表明した。統制を強めるとされる中国も別の後継者を認定する可能性が指摘されており、対立がさらに深まる恐れがあるが、トランプ米政権の姿勢ははっきりしていない。

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 14世はこの日の声明で、チベット亡命政府の関係者や各国の仏教徒、中国本土など各地から制度存続の要請があったと明かした。一方で、かつて取りざたされたこともある後継者の生前指名などには触れなかった。自身の健康状態が良好であるとし、今後の情勢を見守る姿勢とみられる。

 亡命政府によると、中国国内に住むチベット族は600万~750万人程度とされる。一方、2009年の人口調査では、中国外にいるチベット人は約13万人で、そのうち約9万4千人がダライ・ラマ14世や高僧らが拠点を置くインドで暮らしていた。ただ、就職難のインドから欧米やオセアニアの国などに移住する人も増えているという。

 亡命政府は中国国内では100万人近い子どもたちが中国当局が管理する寄宿学校で学習していると主張。中国語による授業が大半で、チベットの言語や文化などを学ぶ機会は減少していると訴える。

 中国政府は声明に反発した。中国外務省の毛寧報道局長は2日の記者会見で、チベット仏教の「中国化」が信仰を侵しているのではないかと問われ、「いかなる宗教の発展も、国の社会環境と文化伝統に適応する必要がある」と強調した。

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