中国国防省は25日、中国軍のミサイル部隊「ロケット軍」が同日午前8時44分(日本時間同9時44分)、模擬弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋の公海へ向けて発射し、予定した海域に落下させたと発表した。香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、中国が太平洋に向けてICBMを発射するのは44年ぶり。日本政府によると、日本上空は通過せず、被害は確認されていない。

 海上保安庁によると、中国側は23日午後6時ごろ、「宇宙ゴミ」の落下地点として3カ所の海域を指定し、25日午前7時~午後1時に落下させると海保側に通告していた。日本の防衛省は米ハワイ南方の公海上に落下したと分析している。

 日中関係筋によると、中国国防省は米国や豪州などに対して事前に通告。対中抑止を強化する米国や、中国を念頭に置いた米英豪による安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」への牽制(けんせい)という見方がある。一方、中国国防省は発表で、「定例の年度訓練で国際法に合致しており、いかなる特定の国も対象としたものではない」とした。

 林芳正官房長官は25日の会見で、中国軍が透明性を欠いたまま、ICBMなどの核・ミサイル戦力を急速に増強させていると指摘。「我が国と国際社会の深刻な懸念事項となっている」と強調した。中国軍の情報収集機が8月下旬に長崎県男女群島沖で領空を侵犯するなど、日本周辺では中国軍の軍事活動が頻繁に確認されていることから、「日本周辺海空域で短期間に事案が立て続けに起きていることに、強い危機感を有している」と語った。(井上亮=北京、田嶋慶彦)

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