中国軍は2024年9月26日、前日に太平洋に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した際の画像を公表した=中国軍のSNSアカウントから

 中国は9月25日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋に向けて発射したと発表しました。中国側が公開した発射時の画像から、米本土の大半を射程に収めるとされるDF31AGの可能性が指摘されています。米シンクタンクの戦略・予算評価センター(CSBA)上級研究員で、中国の軍事情勢に詳しいトシ・ヨシハラ氏は、中国が核戦力を着実に増強させている一方で、2020年代に米国の軍事力が深刻な危機を迎えると指摘します。

 ――中国のICBM発射をどう評価していますか。

 中国軍は現在、(弾道ミサイル、戦略爆撃機、戦略原子力潜水艦の)核の三本柱を保有し、核近代化計画を急速に推進しています。米国防総省は、中国軍が30年までに1千発以上を保有する可能性が高いと推計しています。

 中国は核弾頭が搭載可能で、艦船も攻撃できる中距離弾道ミサイルDF26を保有しています。このDF26やDF31、DF41などICBMの多くは移動式ミサイルです。

 さらに、米政府当局は中国の戦略弾道ミサイル潜水艦が少なくとも1隻、おそらく南シナ海で、継続的な「核抑止パトロール」を行っていることを確認しています。敵対国が中国に核の先制攻撃を行った場合、核で反撃できる強固な第2撃報復能力です。

 戦略レベルでの核の安定性が生まれたため、中国が米国の核による威圧を恐れることなく武力を行使する余地が生まれています。

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「中国の防衛産業基盤が戦時体制」

 ――中国は「核の先制不使用」や「sole purpose(核兵器の役割を核の抑止に限定する政策)」を変更するでしょうか。

 中国は公式には核の先制不使…

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