精神科医・清水研の連載「心豊かに生きるヒント」
体力や気力が衰え始める人生中盤に、精神的に不安定になることがあります。「ミドル・エイジ・クライシス（中年の危機）」とされ、40代ごろから増えます。
がん専門の精神科医をしてきた私自身も、大きな壁にぶつかりました。
東京の国立がんセンター（当時）に勤めていた34歳の頃、責任ある立場を任されました。朝から夕まで診療をした後に研究や学会の準備をし、日付が変わる頃に終電で自宅に帰る日々。土日曜のどちらかは出勤し、慣れない管理職業務にも追われました。
研究もマネジメントもと業務範囲が増え、それまでは努力したり上司に泣きついたりすればなんとかなったことが、うまくいかなくなりました。
がんばり続けていたら、体中ががちがちにこわばり、目が開きにくくなりました。38歳の頃です。ドライアイかなと眼科へ行くと「眼瞼（がんけん）けいれん」と診断されました。原因はまだよくわかっていない、治りにくい病気です。
「一人前になる道、閉ざされた」
仕事を減らしてリーダーを降…
