9月の東京・歌舞伎座では、今年も「秀山祭」が開かれる。2021年に世を去った二代目中村吉右衛門が、明治末~昭和にかけて活躍した初代の芸を後世に伝えようと、06年に始めた公演。今年もゆかりの演目が並ぶ。亡き人の志を受け継ぎ、出演する中村歌六と尾上菊之助が思いを語った。
中村歌六「兄さんは本当に心血を注いでいた」
「吉右衛門の兄さんは『秀山祭』を、本当に心血を注いでフル回転で勤めていらっしゃいましたね。兄さんが残したいと思っていたのは、初代さんの型じゃないと思うんです。型ではなく、芝居に対する考え方。『ハートで演じる』ということを、後世に伝えたくて、始められた。それは続けていきたいと思います」
播磨屋一門として、その長だった吉右衛門の思いを受け継ぐ歌六。「今年も『秀山祭』と冠をつけて頂き、皆さんでやって頂けることは、本当にありがたいと思っています」と語る。
今回演じるのは、初代吉右衛門も度々勤めた「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)」の合邦道心。菊之助演じる娘の玉手御前が、義理の息子に道ならぬ恋心を抱き、さらに毒酒を飲ませて病気にしたと知り、思いあまって自ら手にかけてしまう父親の役だ。
「情はすごくある人なんです…