建築費の高騰が止まらない。資材の値上がりに加え、人手不足から人件費も上がり、計画が行き詰まったり、完成が遅れたりするケースも。影響は、学校や病院といった暮らしに欠かせない施設にも及んでいる。
東京都中野区のJR駅前にある高さ約92メートルの複合施設「中野サンプラザ」。約2千席の大ホールではかつてミュージシャンらがコンサートをしてきたが、老朽化などのため、2023年7月に閉館。今はひっそりとしている。
区は再開発のため、事業者を公募した。野村不動産などはオフィスや住宅、7千人規模のホールなどからなる超高層ビル(地上61階建て、高さ約250メートル)の建設計画を作り、24年7月に認可を申請した。29年度内に完成する想定だった。
だが、認可申請から3カ月後、「建設費が900億円超、上ぶれした」として申請を取り下げた。設備工事費が想定の3倍、エレベーター工事費が2倍となり、運転手の残業時間が規制され、運転手不足が懸念された「2024年問題」で人件費も上がっていた。
採算性を確保するため、野村不などは住宅の割合を1.5倍に増やし、高さを低くした2棟の「ツインタワー」案を示した。だが、酒井直人区長は「(区民の交流施設が)後退した」として拒否。建設計画は事実上、白紙となった。
今後、事業者の選び直しなどを検討する。建て替えの時期は見通せなくなり、一部の区民らからは「建て替えではなく、再利用できないのか」という声も挙がっている。
記事後半では、建築費の高騰が暮らしを直撃した深刻な事例を紹介しています。
新潟市中心部では、新潟三越の跡地に新潟県で最高層となる約150メートルの複合型タワーを建てる再開発の計画が、1年以上遅れている。市によると、準備組合が23以上の業者にヒアリングを行ったが、建設業界の人手不足などの影響で、対応できる施工会社が見つかっていないという。
市の人口は05年の約80万…