事業費の高騰で白紙になった東京都中野区の「中野サンプラザ」の再開発後のまちづくりを巡り、区は23日夜、区民らが参加する意見交換会を開いた。「緑が豊かな都市空間」などを求める声があった一方、「跡地に投機対象となるようなタワーマンションを建てないでほしい」といった意見も出た。
区民約20人が参加し、酒井直人区長も傍聴した。ある参加者は、再開発後のまちづくりについて、大阪の『うめきた広場』などを例に「緑が豊かで木陰のある、歩きやすい広い都市空間」を求めた。渋谷の複合文化新設「Bunkamura」などを参考にし、サブカルチャーや芸術の発信拠点をつくるといった提案もあった。
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一方、建て替えそのものへの注文も出た。まちの持続可能性のため「投機目的で人が住まないようなタワーマンションにしないで」という意見が複数あった。「歴史的価値のある今のサンプラザを再利用すべきだ」など、建て替えに反対する声も聞かれた。
区は今後、区民や関係団体の意見などを参考に、再開発計画の根本にあたる「再整備事業計画」を見直す。そのうえで、来年3月にも新しい計画案を示す方針だ。
当初の計画では、サンプラザの跡地に地上61階、高さ約250メートルの複合施設「NAKANOサンプラザシティ(仮称)」を建設する予定だった。高層棟にオフィスや住宅、展望施設、隣接する低層棟にはホールやホテルが入るとしていた。
だが、野村不動産など事業者側が2024年9月、人件費の高騰や物価高を理由に工事費が「900億円超増える」と区に連絡。区は同年度の着工を断念し、29年度内の完成予定も延期した。その後、事業者側はコストを抑えるため、住宅割合を増やして高層ビルを2棟にする「ツインタワー」案を区に提示した。だが、区は今年3月、「区民の交流施設が後退した」などとして案を拒否すると表明。6月末には野村不ら事業者と結んだ事業推進の協定を解除し、計画は「白紙」に戻っていた。