Smiley face
写真・図版
亡くなった男子生徒の遺影をみつめる母親。「どうして何も言ってくれなかったの。悔しさが今もある」と語る=2025年4月11日午後3時7分、愛知県半田市内、臼井昭仁撮影

 「コロナも落ち着いてきたし、おじいちゃんとおばあちゃんの家へ遊びに行こう」

 「まだ部活の予定が分からないから」

 その日、母親(44)は長男(当時13)と2人で回転ずし店に出かけた。父母と弟の4人家族。仲は良かった。長男は中学校の剣道部に所属し、友人とのもめ事などは聞いたことはなかったという。

 「おやすみ」

 その夜、室内で飼っている犬をなでた後、長男は自分の部屋に向かった。それが最後の言葉となった。

 遺書は残っていなかった。

 愛知県半田市で2022年9月、中学2年の男子生徒が自殺した。なぜあの子は命を絶ったのか。遺族は今も自問自答の日々が続く。

学校側は「原因不明」 納得できず

 葬儀の後、自殺の数日前に学校の野外学習で書いていた親への手紙が届いた。「13年間育ててくれてありがとう」「いろいろなことをさせてくれてありがとう」。感謝の言葉がだけが記されていた。

 学校に尋ねるしかなかった。「何か兆しがあったのでは。どんな手がかりでも欲しかった」

 文部科学省は子どもの自殺が発生した時の調査指針で、再発防止のために学校が主体となって教員などへの聞き取りといった「基本調査」に着手するのが望ましいと定めている。

 1カ月後、学校側から調査の…

共有