三塁側アルプス席から声援を送る小松大谷の白井奨悟マネジャー=2025年8月5日、阪神甲子園球場、武井風花撮影

(5日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 創成館3―1小松大谷)

 5日の開幕試合で創成館(長崎)と対戦した小松大谷(石川)のマネジャーは、もともとグラウンドを駆け回る選手だった。しかし、入学前に左足の病が発覚し、選手を諦めることに。「それでも野球に関わりたい」と入部し、3年間チームを支えてきた。

 小松大谷の白井奨悟さん(3年)。中学生のころから、左足に違和感を覚えながらプレーを続けていた。ひとまず引退した中3の冬。踏ん張るだけで左足の裏に激痛が走るようになった。

 診断された病名は「足底腱膜(けんまく)炎」と「骨嚢胞(のうほう)」。医師からは「全力で走ることはできません。野球はもうやめてください」と告げられた。

 「もうプレーができんのか」と落ち込んだ。

 足の痛みは限界だったが、それでも小学生から続けてきた野球を諦めきれない。選手の熱意がこもる野球のプレー、一つひとつが好きだったからだ。

 「野球という競技に関わり続けたい」。そう思い、進学先を強豪校の小松大谷に決めた。

 入学前、中学時代の監督とともに西野貴裕監督(50)のもとを訪れた。「マネジャーをやらせてください」

 西野監督からは「マネジャーの仕事は甘くない。覚悟を持ってやってほしい」と言葉をかけられた。

 入部後は、水まきや道具の修理、選手と指導者の連絡など多くの仕事を担った。ノッカーや打撃投手となり、選手らの自主練習も積極的に手伝った。

 思い切り走る選手たちを見て、白井さんは言った。

 「野球を全力でできるのは、当たり前じゃない、幸せなこと。それを支えるのが自分の望みです」

 エースの江守敦士投手(3年)は「ネットの補修やゴミの分別といった、見えないところで支えられている」。松井蒼輔選手(2年)は、白井さんに球を投げてもらい、バットを振る角度や姿勢を修正したという。「チームのことを思ってくれる欠かせない存在」と話す。

 仲間たちは石川大会を勝ち上がり、甲子園出場を決めた。白井さんはマネジャーとして選手たちに同行し、3日の甲子園練習にも参加。「アルプススタンドや銀傘の光景がきれいだった」と目を輝かせた。

 白井さんは、今後も野球に携わり続ける決意を胸に、県内の審判講習会にも参加した。「野球のことなら、全てを知っている、そんな審判がかっこいい」。高校野球の審判員としてフィールドに立ち続ける未来を目指している。

 開幕試合前はノッカーを務め、試合が始まってからはスタンドでメガホンをたたいて応援した。グラウンドで懸命にプレーする仲間の姿は、「見るだけで感動した」という。

 試合終了後は仲間と抱き合って涙を流した。「このメンバーで野球ができなくなるのはさみしい」。それでも、「甲子園に連れてきて、これだけ暴れてくれた。選手には感謝しかない」と話した。

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