乃木坂、日向坂、櫻坂(桜坂)――。アイドルグループの名称の由来にもなった数々の坂がある東京都港区。40以上もの坂が集中する麻布エリアに地形を生かした、初のご当地グルメが誕生した。その名も「麻布坂カレー」。6店舗で計7種類のユニークなメニューが楽しめる。
港区は東に低地、西に台地が広がる高低差の激しい地形で坂が多い。大規模開発で消えた坂もあるが、名前が付いた坂が現在も80以上ある。江戸時代は武家屋敷が集積しており、藩や大名の名前が由来の坂もある。
坂カレーは、麻布の魅力発信を考える区のプロジェクトの一環。坂とカレーをかけ合わせたご当地グルメのアイデアが区民から寄せられたという。ご飯をダム、ルーをダム湖に見立てた「ダムカレー」から着想を得たそうだ。
坂カレーのルールは、店の近くの坂道にちなんだメニュー▽ご飯に傾斜をつけて、坂に見立てる▽アクリル標柱を立てる--の三つ。協力する飲食店がそれぞれメニューを考え、1月から3店舗で提供が始まった。
「欧州カレー専門店 ガヴィアル・プラス 麻布十番店」は2種類のメニューをつくった。牛タンと畑のキャビア「とんぶり」をぜいたくに添えた「仙台坂カレー」(税込み2800円)は、人気の1品だ。同店の宮沢貴一さんによると、坂の近くにかつて仙台藩の屋敷があったことから、仙台名物・牛タンを使うことにした。
3月から加わった「大黒坂カレー」(税込み1700円)は、坂の中腹にある「大法寺」にまつられた大黒天にちなんだ。目を引くのは長さ20センチの黒キャベツ。ほかにも、ナスや紫ニンジンなどの黒野菜が加わる。宮沢さんは「すでに『暗闇坂』をモチーフにした第3弾も考案している。盛り上げに一役買えれば」と意気込む。
区は今後、協力店舗をさらに増やしたい考えだ。現在は、どのメニューにも「麻布坂」と記された標柱を立てているが、新年度以降は各メニューにちなんだ坂の名称の標柱を立てる計画だという。区の担当者は、「カレーを通じて歴史など、これまで知らなかった麻布の一面に触れてほしい」と話している。