久留米空襲を題材にした演劇「青色と灰色の境界線―Inherit the heart―」のビデオ上映会が8月12日、福岡県久留米市の久留米シティプラザCボックスで開かれる。福岡県立福島高校(八女市)の演劇部が2010年に発表し、13年の時を経た昨夏、当時の部長が再演にこぎつけた作品。今回はビデオ上映だが、空襲80年の来年は、新たなキャストで再演を目指す。
上演を企画したのは、久留米市出身で東京で舞台企画制作会社を営む入部亜佳子(いりべあかね)さん(31)。福島高校3年のころ、久留米空襲のことを詳しく知って、舞台化を決意。部長だった演劇部で取り組んだ。
敗戦間近の1945年8月11日、久留米市は米軍の焼夷(しょうい)弾攻撃で200人を超す市民が亡くなった。この久留米空襲について、当時部員だった中川智葉さん(31)が、体験者に話を聞いて脚本を書き上げたという。
高校で上演してから13年後、久留米出身の脚本・演出家、林将平氏に依頼して、夢だった地元久留米での上演が実現した。
空襲当時の子どもが高齢となり、体験した悲惨なできごとを現代の若者に語り継ぐ内容で、当時と現代を交互に描いた。
昨夏は、筑後地区在住者を中心に、アマチュア劇団などから10~86歳の男女が集まり、3日間で4回公演。熱を帯びた演技に多くの市民が魅せられ、「地元であった空襲について初めて知った」「劇中の公園に行ったら、慰霊碑を見つけた」など、多くの感想が届いたという。
入部さんは「地元で起きた出来事を知ると、もっと調べてみたくなる。作品がそのスイッチを押す役目を果たせたらいい」と話す。今回は予算や時間の都合でビデオ上映の形になった。だが入部さんは、久留米空襲を風化させないよう、毎年夏にこの作品を上演し、若い世代に伝えていくことを決意したという。
「作品は時代とともに変わる。来年の舞台にはそれも入れ込みたい」と入部さん。来年に向けて、すでに新キャストのオーディションを始めており、上映会当日には一部を発表する。
1部はビデオ上映(午後2時~3時40分)、2部は入部さんらのトークショー(午後4時~4時半)。会場の外の六角堂広場では、ピザなどのキッチンカーが並ぶマルシェもある。
前売りは、大人2千円、18歳未満1500円。当日券はプラス300円。ネット申し込みはQRコードから。問い合わせは製作委員会(070・9080・5497、メールaoirohaiiro@81g.jp