(16日、第107回全国高校野球選手権兵庫大会3回戦 東灘3―4小野工)
東灘が土壇場で同点に追いついた。光ったのは、磨いてきた「走塁」だ。
九回2死三塁。あとアウト一つで最後の夏が終わる。四球を選んだ小林海斗選手(3年)は、「絶対に1点を取る」と決めていた。一塁に向かって全力で走り出す。そのままノンストップで一塁ベースを蹴り、二塁へ向かった。
捕手からボールを受けとった投手が二塁に送球した瞬間、今度は三塁走者の多久和淳也選手(1年)が本塁へ突入した。ダブルスチールが決まり、土壇場で1点をもぎ取って同点にした。球場は大きくわいた。
小林選手は「絶対に1点を取れる自信があった」という。毎週、このダブルスチールを何度も練習してきたからだ。打てなくても、絶対に1点を取らなければならない大事な場面に備えてきた。
だが、チームは九回にサヨナラ負けした。
小林選手は試合後、「支えてくれた3年生の仲間のために勝ちたかった」と話した。起立性調節障害があり、1年生の時から練習は時々休まざるを得なかった。それでも同級生らが「一緒に頑張ろう」と受けいれてくれたから、今がある。
「ギリギリの熱い試合ができた。3年生のみんなとの思い出に残ると思う」