九州大学農学研究院は16日、福岡県嘉麻市の小学校廃校舎に設置した実験施設で、コバエが大量に発生し、近隣の民家に侵入する事態が発生した、と発表した。「近隣住民の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしました」と謝罪している。
同院によると、実験施設では、主にニワトリ用の飼料にする目的でカブトムシの幼虫を500匹を飼っていた。しかし、幼虫用のエサとなるシイタケの廃菌床や廃竹のチップを使った堆肥(たいひ)から、大量のクロバネキノコバエが発生したとみられるという。
16日にあった市議会の総務財政委員会で、経緯が報告された。
市と大学によると、昨年9月から市内の旧千手小学校の教室を使って実験を開始。12月ごろから約500個の飼育容器の一つからコバエが発生しだしたという。
当初はカブトムシへの影響を避けるため、殺虫剤などは使わなかったが、3月中旬に近隣住民から「蚊のような小さな虫が飛んで、大変に不快で困っている」と苦情が寄せられ、殺虫剤を使って駆除を始めた。しかし1週間後も住居への侵入が続いていることが確認され、大学はカブトムシの幼虫を撤去し、専門業者がコバエを殺虫剤で駆除したという。
被害の規模は調査中だが、住民の健康への影響はないという。市や大学は近隣の15軒を訪問して謝罪した上で、周辺の40軒にも謝罪と実験撤退を伝える文書を配布した。九州大は16日夕方から記者会見して、経緯を説明しておわびするとしている。
実験計画では、カブトムシの幼虫を今年度に5千匹、来年度に5万匹に増やす目標だった。将来的には、カブトムシの幼虫を人用の食糧資源としての活用を模索したいとしていた。(伊藤隆太郎)