九州電力川内原発=鹿児島県薩摩川内市

 九州電力が次世代革新炉の建設検討を発表したことで、凍結されている川内原発3号機(鹿児島県薩摩川内市)の増設計画が改めて注目を集めている。塩田康一知事は「新しい動きとは思っていない」との見方を示すが、脱原発団体は「実質的に川内3号機の増設だ」と反発を強めている。

原発回帰で建設可能に

 東京電力福島第一原発事故が起きるまで、3号機増設の手続きは「2014年3月着工、19年12月運転開始」を目指して着々と進んでいた。

 九電は03年、増設に絡む環境調査を開始。09年に知事と薩摩川内市長に増設を申し入れ、10年3月には法律に基づく環境影響評価(アセス)の手続きを完了。経済産業省主催の第1次公開ヒアリング(同年5月)や経産相の「重要電源開発地点」指定(同年12月)などの手続きを経て、東日本大震災の2カ月前の11年1月、国に安全審査を求める原子炉設置変更許可を申請していた。

 その後、九電は1、2号機の再稼働に注力。3号機増設については、再稼働を容認した伊藤祐一郎知事(当時)が「手続きを凍結する」と表明し、後任知事もその姿勢を受け継いできた。九電の今回の発表を受け、塩田知事は20日、報道陣に「3号機については凍結というスタンスは変わっていない」と述べている。

 国では、岸田政権になって原発回帰が加速。23年2月のGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針でまず次世代革新炉への建て替え容認に転換。今年2月の第7次エネルギー基本計画では「原発依存度を可能な限り低減する」の文言を削除し、同じ電力会社が別の原発敷地内に建てる場合も廃炉分の建て替えとみなす要件緩和に踏み込んだ。

 九電は「具体的な場所を念頭に置いた検討はしていない」と説明するが、建設準備が進んでいるのは川内3号機しかない。玄海原発1、2号機(佐賀県玄海町)を廃炉にした九電は川内に新しい原発を建設できる立場にある。

地元同意はやり直しか

 次世代革新炉を川内原発敷地内につくる場合、手続きはどこからやり直す必要があるのか。塩田知事は報道陣に「当時の原子炉と異なるのであれば、もう一度、知事の意見を求められると考えている」と述べた。

 知事の意見は、重要電源開発地点の指定に先立って経産相に伝えることになっている。3号機では伊藤知事(当時)が10年11月に同意を表明した。次世代革新炉は当時の3号機とは別のものになるため、改めて意見照会があるのではないか、と塩田知事は説明した。

 知事の説明について、担当の県地域政策課は「意見照会の見通しがあるのでなく、規定上再び意見照会があるのではないでしょうか、ということ」と解説する。

 地点指定の規定では、原子炉…

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