日本の女性に最も多いがん、乳がんのサバイバーは、ほかの病気のリスクにも注意を払って――。筑波大学などの研究チームが約12万人を追跡調査し、乳がんを経験した人は心不全や骨折、消化管出血、肺炎などの発症リスクが、乳がんではない人に比べて高いと明らかにした。これらの病気の多くは、乳がんと診断されてから比較的早期にリスクが高い傾向も見られた。
研究成果が医学誌に掲載された。研究チームの岩上将夫・筑波大教授(疫学)は「乳がんサバイバーの方はがん治療が終わっても、健康意識を高く持ち続けてほしい。乳がん治療医も患者への助言のほか、内科などほかの医師と協力し、ほかの病気の予防・早期発見に結びつけることが重要だ」と話している。
乳がんは日本人女性の9人に1人がかかる。ほかの部位に比べて若くても発症しやすいが、早期発見や治療向上で生存率は高く、世界的にもサバイバーが増えている。欧米の研究では、乳がんサバイバーが心不全や骨折などを発症するリスクが指摘されているが、日本を含むアジアではよくわかっていなかった。
そこで研究チームは、全国の健康保険組合に加入する会社員と扶養家族の診療報酬明細書(レセプト)と健診結果を集めたデータベースに、2005~19年に登録された18~74歳の女性のうち、手術を受けた乳がんサバイバー2万4017人と、年齢を合わせた乳がんではない9万6068人を最大10年追跡した。がん以外の12疾患にかかるリスクを、体格指数(BMI)や喫煙歴、飲酒習慣などの影響を取り除く手法で分析した。
その結果、乳がんサバイバー…