北海道内で乳製品工場の「建設ラッシュ」が始まった。メーカー各社が工場の新設や増強に乗り出している。相次ぐ投資は大手4社で総額1千億円を超えた。背景に何があるのか。
放し飼いの牛がたたずむ牧場のそばに、地上6階の巨大な建屋が姿を見せ始めている。
酪農地帯が広がる中標津町計根別(けねべつ)で、乳業大手・明治ホールディングス傘下の明治が建設する新工場だ。半世紀ほど前に建てた近隣の工場に代わって、2027年春にも生産を始める。
「この先50年は私たちがしぼった生乳(せいにゅう)を使ってくれるということだ」と計根別農協(JAけねべつ)の北村篤組合長は頰を緩ませる。周辺の酪農家112戸が年9万トン超の生乳を出荷している。「意欲にあふれた後継者を育て、メーカーの期待に応えていきたい」と前向きだ。
明治は480億円を投じる。脱脂濃縮乳や脱脂粉乳、乳たんぱく質、クリーム、バターを中心に、栄養価や機能性を高めた新たな乳製品を生産。イスラム文化圏への輸出もできるよう「ハラル認証」の取得にも取り組むという。さらにSDGsも意識して、二酸化炭素排出量、地下水のくみ上げ量を、既存の工場よりも半減させる。
同社は、道東にある西春別工場(別海町、1968年操業)と本別工場(本別町、1972年操業)の老朽化が進んでいるため、新工場への集約に踏み切った。乳製品の安定供給を維持するために、生産拠点の再編が必要と判断したという。西春別と本別の両工場は新工場が操業後に順次、生産を中止する予定。
明治と競うように、同じ町内…