Smiley face
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談笑する根津充さん(左)と黒川とう子さん=2025年5月30日、東京都内、富永鈴香撮影

 東京都内に住む根津充さん(51、仮名)と黒川とう子さん(52、仮名)夫妻は、28年ぶりに衆院で審議入りした選択的夫婦別姓法案の行方を固唾(かたず)をのんで見守っている。

 別姓でいるために事実婚を選んで17年。法律婚でないために多くの不利益に直面し、不安を募らせてきた。

 妻の黒川さんにとって、名字は「人生を形づくる基礎であり、私そのもの」。結婚を考えたとき既に30年以上この名字で呼ばれ、人間関係を築き、仕事をしてきた。相手にとってもそれは同じだ。法律婚でどちらかが名字を捨てなければいけないのは、絶対に嫌だった。

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 夫の根津さんは、以前は女性が名字を変えるものだと思っていた。だが、黒川さんと対等な関係を築く中で、考えを改めた。「女性が変える理由は慣習以外にない。そのままなぞることはできない」。改姓に伴うのは、「生涯にわたって静かに自分を否定され続ける痛み」。自分が痛みを感じる立場に回ろうとも思ったが、黒川さんはそれを望まなかった。

事実婚の不利益や不安が「ボディーブローのように」

 「これが私たちの生きる道」。当初はそう考えていた2人だが、年々、事実婚であることの不利益や不安が「ボディーブローのように効いてきた」。

 人生の大事な局面ほど、正式な夫婦でないことをつきつけられ、悔しい思いをしてきた。

 家を買おうとした約10年前、住宅ローンをペアローンで組もうと主な金融機関はひととおり調べたが、事実婚でも組めるところはほとんどなかった。黒川さんは「いつ別れてもおかしくないと思われている。法律婚でも3組に1組が離婚しているのに、事実婚は軽く扱われていると思った」。結果的に、収入合算ができるところで、高い金利でローン契約することになった。

 黒川さん、根津さん夫妻は、2024年3月に提訴された選択的夫婦別姓制度を求める国賠訴訟の原告団に加わります。提訴に踏み切るほど悩まされた、事実婚にともなう不利益や不安とは。記事後半でお読みいただけます。

 ほかにも不利益は枚挙にいと…

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