左から坂東玉三郎、片岡仁左衛門=東京都内

 半世紀以上にわたり、名コンビとして多くの歌舞伎ファンの心をつかんできた片岡仁左衛門と坂東玉三郎が、10月、歌舞伎座の舞台で共演する。演目は、泉鏡花作「婦系図(おんなけいず)」。お互いを「大切な存在」と呼ぶ2人が、役の魅力、そしてコンビとしての現在地を語った。

「婦系図」で共演、10月歌舞伎座

 若きドイツ語学者の早瀬主税(ちから)(仁左衛門)は、ほれ合った元柳橋芸者のお蔦(つた)(玉三郎)とひそかに夫婦となるが、恩師の命令で別れさせられる――。

 「婦系図」は1908年の初演以来、新派の代表的演目としてたびたび上演され、繰り返し映像化もされた悲恋の物語。美しい月明かりの下、主税がお蔦に別れを告げる「湯島境内」が名場面として知られる。それぞれ、新派の舞台に客演する形で演じたことのある役だが、この2人で上演するのは初めてだ。

 玉三郎「これからどんなことが2人で出来るかしらという話をしていて。色々な演目が挙がりました中で、歌舞伎ではないですけれど、『〈湯島境内〉はどう?』という話になって。2人とも新派とは親しくさせて頂いていますし、松島屋(仁左衛門)さんとは『滝の白糸』や『日本橋』と、数々の新派の作品もやらせて頂いていますので」

 仁左衛門「本当に、いつも2人でお仕事をすると非常に楽しいものですから、『次は何をしようか』と、よくお話ししているんです。私も主税は好きなお役ですし。まさか、またするとは思っていなかったんですけれども、『大丈夫かなあ』と言うと、『大丈夫よ』って。『そんなら、やろうか』となりました」

後半では孝玉時代の思い出についても語って下さいました。

 玉三郎「鏡花の小説の男は…

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