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国立競技場(後方)の近くにあるオリンピックシンボル=2023年2月28日、東京都新宿区、山本裕之撮影

 東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、公正取引委員会は23日、広告最大手「電通」や2位の「博報堂」など7社の独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定し、再発防止を求める排除措置命令を出した。計33億2592万円の課徴金納付命令も出した。

 7社は他に「東急エージェンシー」「ADKマーケティング・ソリューションズ」、イベント制作会社の「セレスポ」と「セイムトゥー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション」。ADKは課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づいて公取委の調査前に違反を自主申告し、課徴金納付命令は免れた。

 公取委の発表によると、各社は遅くとも2018年4月以降、大会組織委員会が発注したテスト大会の計画立案業務と実施業務、本大会の運営業務について、事前に調整して受注予定業者を決めていた。

 電通グループと組織委元次長=同法違反罪で有罪確定=が6社に対し、一般競争入札でテスト大会の計画立案業務を受注した業者が、その後の実施業務や本大会の運営業務も随意契約で受注できるという方針を伝え、合意していたという。対象の26会場の大半で、予定業者以外は入札に参加していなかった。

電通グループ、談合主導で課徴金割り増し

 テスト大会の計画立案業務の入札分は計約5億円だったが、全体の契約金の99%を占めるテスト大会と本大会の運営業務の契約分は計約437億円だった。電通グループは一連の談合を主導していたとして、課徴金の額が割り増しとなった。電通グループは23日、法令違反の対象に「看過できない相違がある」などとして、公取委の処分の取り消しを求めて提訴することを決めた、と発表した。

 フジクリエイティブコーポレーションはホームページ(HP)で同日、「当社の見解とは異なるもので、引き続き慎重に対応を検討する」とした。ADK、東急エージェンシー、セレスポはそれぞれのHPで、法令順守の徹底や再発防止に取り組むなどとしている。

 事件では、東京地検が組織委元次長と電通側を含む法人6社、各社の幹部ら計7人を起訴した。一審では、本大会の運営業務など随意契約分も含めて受注予定業者を決める調整をし、競争を制限したとする判決が続く。博報堂は無罪を主張し、電通側は随意契約分については談合が成立しないなどと主張していた。いずれも一審判決を不服として控訴。博報堂は控訴審でも有罪判決を受け、上告した。

 五輪を巡っては、東京大会のスポンサー選定などをめぐって計約2億円の賄賂を受け取ったとして、電通元専務で組織委元理事の被告が受託収賄罪で起訴され、公判中。談合事件は汚職事件の捜査で浮上した。大会運営を主導した電通のほか、汚職事件で贈賄側として逮捕者が出たADK側も、落札者となっていた。

東京五輪をめぐる事件の経緯

東京五輪・パラリンピックをめぐる事件の経緯

2013年9月 開催都市が東京に決まる

 14年1月 大会組織委員会が発足

   4月 組織委が電通を専任代理店に指名

   6月 電通元専務が組織委理事に就任

 18年9月 各競技のテスト大会が始まる

 20年3月 大会の1年程度の延期決定

 21年7月 東京五輪・パラ大会。9月まで

 22年6月 組織委が解散

   8月 東京地検が組織委元理事を逮捕。逮捕は計4回、贈賄企業は5社に【汚職事件】

 23年2月 地検が組織委元次長、電通元幹部らを逮捕。法人6社と7個人を起訴【談合事件】

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