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 夏の甲子園をめざす全国高校野球選手権の地方大会が間もなく開幕する。開会式には大会歌などを歌う高校生も登場する。8年前の栃木大会で、亡き父の願いをかなえて独唱した早川愛さん(26)はプロの声楽家になった。当時の歌声はインターネット上で大きな話題になり、今も高校野球ファンの間で語り継がれている。

今でも関係者やファンの間で話題になる歌声

 早川さんが「栄冠は君に輝く」を独唱したのは、第98回の栃木大会。当時は宇都宮短大付属高校音楽科の3年生だった。伴奏なしで、ゆったりとしたテンポで、高いキーで歌いきった。歌声は多くの人の心を揺さぶり、会場から拍手が絶えなかった。ネット上でも話題になり、今でも夏が近づくと野球ファンや関係者の間で話題になるほどだ。

 その後、東京芸術大学音楽学部声楽科(ソプラノ専攻)で学び、卒業後の2023年、優秀な声楽家を発掘する「ソレイユ声楽コンクール」で第1位の音楽現代新人賞に選ばれた。日本の新進気鋭の音楽家の1人だ。

 すでにプロ歌手として活動しているが、大会歌の独唱で早川さんを知り、コンサートに来る客も少なくないという。

 語り継がれる歌声だが、プロになった本人は「ものすごく下手です。音程もひどいですし」と照れ笑い。「高校生で、ちゃんとした舞台にもほとんど立ったことがなかった。大勢の前で必死に歌っただけだった」

 多くの人の心をとらえたのはなぜか――。早川さんは「当時、父親のことが報じられた。バックグラウンドが、色々な人に伝わったと思う。父のおかげです」と振り返る。独唱の前年の8月、50歳でがんにより亡くなった敏彦さんだ。

亡き父との約束守るため……

 実は、早川さんは幼い頃は新…

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