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氷菓子を食べて休憩する明誠学院高校の吹奏楽部員たち=2024年7月9日、岡山市北区、オザワ部長撮影
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 明誠学院高校(岡山市北区)吹奏楽部顧問の稲生健が凍らせた棒ジュースを二つに割って差し出すと、93人の吹奏楽部員たちが「ありがとうございます!」と次々に受け取っていく。キャーキャーと楽しげな歓声が上がる。

 暑い季節、息抜きのために行われている吹奏楽部の恒例行事「チューチュータイム」だ。

 吹奏楽コンクールが近づくと、部員たちはA部門に出場する55人の「ばら」チームと、B部門38人の「もも」チームに分かれて練習する時間が長くなる。表情も硬くなりがちだが、このときばかりは全員が集まり、笑顔で棒ジュースをかじる。

 トランペットパートでファーストトップ奏者を務める3年生・梅田龍優(りゅう)は、棒ジュースの冷たさに顔をしかめながら二つに割り続ける稲生を見つめ、心の中でこう誓っていた。

 「今年こそ稲生先生や仲間たちと一緒に全国大会で金賞をとろう!」

【連載】My吹部Seasons

吹奏楽作家のオザワ部長が各地の吹奏楽部を訪ねます。

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5回連続で銀賞

 明誠学院高校は2000年以降、全日本吹奏楽コンクール(全国大会)に通算13回出場。16年からは7大会連続で出場している。かつて俳優の眞栄田郷敦が所属していたことでも有名だ。一方、全国大会での金賞は02年の1度だけだ。

 稲生は岡山県津山市立西中学校、同市立北陵中学校の吹奏楽部顧問としては全国大会で5回金賞を受賞している。ただ、明誠学院高の顧問になった09年からはまだ金賞はなく、直近は5回連続で銀賞だ。

 実は、龍優も金賞が遠い。山口市で生まれ育った龍優は小2で吹奏楽部に入り、小6で全日本小学生バンドフェスティバルを経験した。市立小郡中学校に進学すると1年のときに全日本吹奏楽コンクールに出場。2年はコロナ禍でコンクールは中止だったが、3年ではコンクールとマーチングコンテストで全国大会に出場した。だが、一度も金賞に手が届かなかった。

 「音楽大学にも行きたいけど、大好きな吹奏楽も思い切りやりたい。そして、全国大会で金賞をとりたい」

 そんな思いで龍優は親元を離れて明誠学院高校に進学し、寮生活を送りながら部活に没頭してきた。

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龍優が気づいたこと

 龍優は高1、高2と「ばら」チームに入り、全国大会に出場したが、いずれも銀賞だった。

 だが、目の前の扉がパッと開…

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