イスラエル軍は8日に実施したパレスチナ自治区ガザ中部ヌセイラトの人質救出作戦で、男女4人を救出。一方で、ガザ保健省はこの作戦によってパレスチナ側の274人が死亡したと発表しました。9日にはイスラエルのガンツ前国防相が、ガザでの戦闘方針を決める戦時内閣から離脱することが発表されました。こうした動きは国際社会やネタニヤフ政権の今後にどのような影響を及ぼすのか。中東地域の政治に詳しい長沢栄治・東大名誉教授に聞きました。
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――今回の人質救出作戦をどう見ますか。
停戦交渉を続ける仲介国や国際社会は、多くの犠牲を出したヌセイラトの軍事作戦を強い言葉で非難した。だが、イスラエルとの外交問題の見直しまでには至らないだろう。
特にエジプトは、これまでイスラエルとハマスの仲介役として中心的な役割を果たしてきたが、今回はカタールに役割を奪われている状況だ。エジプトは仲介役として主役の座を維持したい考えがあり、自分たちが有益な状況になるまで様子をうかがっている。
国際社会や関係国は、停戦だけでなく、中長期的なイスラエルとパレスチナの平和について、本気で考える時期にきている。
イスラエルは今回の攻撃で、国際社会の反応をうかがっていたのだろう。今後同様の作戦をするにあたって、今回の攻撃が呼び起こした反応を一つの基準にするのではないか。
――ガンツ前国防相が戦時内閣を離脱しました。ネタニヤフ政権にどのような影響があるでしょうか。
ガザでのイスラエルの最終目標は、ハマスの戦闘能力や政治的な組織力を奪うことだ。これに関してはイスラエル政府内に不一致はない。しかし、停戦後のガザ統治をどうするのかという出口戦略を巡って、閣内で大きな対立が起きている。
ガンツ氏はこれまで、直接的な占領は避けるべきだとしてきた。これに対して閣内の極右政治家は、イスラエルが主導して再びガザに入植地を作るべきだなどとし、交渉よりも戦闘継続を主張している。なかなか出口戦略が決まらないなかで戦争が続き、犠牲者を出し続け、国際社会からの非難も強まっている。ガンツ氏が離脱したことで強硬派の極右勢力が伸長するかどうかは読めないが、ガンツ氏に同調して離脱する閣僚が出てくる可能性はある。ネタニヤフ氏の政権運営は一層難しくなるだろう。
――イスラエル世論の反応は…