朝食で好評の「トップ オブ キョウトオリジナル 水尾実生柚子のドリンク」(イメージ)=リーガロイヤルホテル京都提供
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 これまで利用してこなかった京都府内の食材を発掘し、一流レストランの一皿にするなど付加価値の高い料理に生まれ変わらせるプロジェクトが今春から始まった。府の後押しを受けた取り組みで、関係者らは京都から新しい価値を生み出す「食文化」を発信しようと意気込んでいる。

 千枚漬けをつくる工程で不要な部位として廃棄されてきた聖護院かぶや、果汁を搾ったあとのユズの外果皮と内果皮、市場の規格外のパールコーン……。プロジェクト第1弾としてリーガロイヤルホテル京都(下京区)での試食会で披露された食材は、いずれも「旬の一番おいしい時期」にピューレ状などに加工して料理に生かされた。

 聖護院かぶのすりおろしは甘さを生かし、宮津港であがったアオリイカと合わせてリゾーニ(米粒形のパスタ)のソースに。試食した漬物店「京つけもの もり」の森義治社長(60)は「千枚漬けのカブは、最高品質のものを使うが、廃棄する部分が多く、お金を払って廃棄することに胸を痛めていた。京都の漬物店で出るロスをこんなにおいしい料理に生かせたらすばらしい取り組みになるのでは」と目を見張った。

 香り高いと評判の京都市右京区・水尾地域特産の実生ユズ。不要とされていた果皮を搾ったドリンクは、ホテルの朝食メニューとしてすでに提供されており、好評だ。水尾特産品加工組合の松尾史弘組合長(77)は「果皮にこれほどの香りと果汁が残っていたことに驚いた。これまで加工した後のユズは、畑の堆肥(たいひ)にしてきたが、最近はそれをシカが食べにくるようになり困っていた。ホテルで世界各国の人に私たちのユズの香りを楽しんでもらえるのは本当にうれしい」。

 ホテルのフランス料理店「フレンチダイニング トップ オブ キョウト」の寺田篤史シェフ(42)が料理を手がけた。規格外や不要なものを使っている意識は全くなく、良いもの、魅力のあるものを探していたら出合った感覚だという。「これまで利用されてこなかった食材の魅力を引き出して料理に生かすことは、私にとっても発見が多くワクワクする。京都産食材を期待されるお客様も多く、喜ばれる。京都から新しい食文化も発信できれば」と話す。

 府商工労働観光部によると、これまでも規格外の野菜や果物を使った商品づくりには、生産者が取り組んでいた。だが、供給が安定しなかったり、加工に手間がかかったりし、売り先が限定されて一過性になることも多かったという。

 今回は、生産者や技術の高い食品加工業者、食品専門の流通業者、ホテルなどが協力してサプライチェーンを構築。より多くの協力者を得て取り組む。

 プロジェクトは「MIRYO FOOD」と銘打った。「未利用食材」を利用し、食べる者をうならせる「魅了食材」に生まれ変わらせるといった思いが込められている。今後も賛同する生産者や料理人を募集していくという。問い合わせは同部(075・414・4377)。(才本淳子)

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