Smiley face
写真・図版
北向山不動院の半跏不動明王像=2025年3月12日、京都市伏見区、筒井次郎撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 京都市南部の伏見区にある五つの古寺が、今春の「京都非公開文化財特別公開」(京都古文化保存協会主催、朝日新聞社特別協力)で秘仏や寺宝を披露する。北向山(きたむきざん)不動院と円妙院は初めて、安楽寿院(あんらくじゅいん)は9年ぶり、長建寺は7年ぶり、大雲寺は6年ぶりの公開となる。

 「洛南」と呼ばれる伏見には、都の中心「洛中」とは異なる魅力がある。

 まずは平安末期に築かれた広大な鳥羽離宮の跡へ。竹田エリアの北向山不動院と安楽寿院が、院政を敷いた鳥羽上皇ゆかりの本尊を公開する。

 北向山不動院の本尊は、上皇の誕生日(1月16日)にしか開扉されない秘仏の半跏(はんか)不動明王像(重要文化財)。右足を下ろして今まさに立ち上がろうとする迫力のある造形は、病床の上皇の夢枕に現れた姿を表現したそうだ。

 北向きに安置されたのは、都を守るため。南面(なんめん)法雄住職(67)は「鳥羽離宮の歴史を今に伝える、躍動感のあるお不動さんです」と話す。

 東150㍍にある安楽寿院は、阿弥陀如来坐像(ざぞう、重要文化財)を公開する。黄金に輝き、穏やかな表情には気品が漂う。

 元々は上皇の墓所にあった本尊で、今は20年ほど前に完成した収蔵庫に鎮座する。黒漆塗りの厨子(ずし)の扉に反射する黄金も美しい。「鳥羽上皇が大切にされた特別な仏像です」と齊藤亮秋住職(75)。京都国立博物館に寄託した「孔雀(くじゃく)明王像」など重要文化財の絵画3点も里帰り展示する。

 次は酒蔵が軒を連ねる伏見エリアへ。江戸時代に京都と大坂(大阪)を結ぶ水運で栄え、その水路に面して赤い唐風の山門を構えるのが長建寺だ。

 印象的な造形の二つの像が開帳される。8本の腕を持つ本尊の八臂(はっぴ)弁才天坐像。そして、その前にある宇賀神将(うがしんしょう)像は、体は蛇、顔はおじいさんという独特の姿だ。親しみをこめて「うがじんさん」と呼ばれる。

 「顔のモデルは近くに桃山城(伏見城)を築いた豊臣秀吉ともいわれています」と岡田豊禅住職(91)。原則、12年に1度の干支(えと)の巳年(みどし)に開帳される。

 最後は伏見稲荷大社の南隣にある深草エリア。閑静な住宅街をゆくと古刹(こさつ)の宝塔寺が現れる。その二つの塔頭(たっちゅう)、大雲寺と円妙院を拝観できる。

 大雲寺は、豊臣秀吉が建てた方広寺大仏殿の余った部材で築いた宝塔寺の仮本堂を起源とする。

 公開する寺宝の一つが極小の秘仏だ。高さ7センチの厨子に収められた日蓮聖人像は、その精巧な彫り込みに驚かされる。

 大きな五輪塔が立ち、47本の北山台杉が植わった庭園は趣がある。回廊や茶室の円窓など、見る角度によって様々な風情が味わえる。

 円妙院は、百貨店の大丸を創業した下村家の菩提寺(ぼだいじ)だ。下村家専用の玄関を設け、本堂の上段の間は、かつては親族しか入れなかった。下村家が寄進した絵画や袈裟(けさ)などの寺宝が初公開される。

 注目は、鶏(にわとり)が描かれた杉戸絵。江戸中期の「奇想の画家」伊藤若冲の作と伝わる。

 両寺院の住職を務める原光司さん(78)は「狩野派の絵画など、多種多様な文化財を楽しんでもらいたい」と話す。

26日以降に順次公開、伏見稲荷大社も

 公開期間は、北向山不動院(竹田浄菩提院町)と安楽寿院(竹田中内畑町)、長建寺(東柳町)は26日~5月11日。大雲寺(深草宝塔寺山町)と円妙院(同)は5月1~11日。伏見稲荷大社も「お茶屋」などを4月26日~5月11日に公開する。拝観料は各大人1千円、中学・高校生500円。☎075・451・3313(京都古文化保存協会)

共有