（21日、第106回全国高校野球選手権大会準決勝 京都国際3ー2青森山田）
京都国際・長谷川颯外野手
来た。低めの変化球。六回1死満塁、拾うように振り抜いたバットが、打球を右前へ運んだ。同点の2点適時打。チームは息を吹き返した。
青森山田の2番手、関浩一郎には最速152キロの速球がある。対策は二つ。バットを短く持って強い直球に振り負けないことと、空振りを取りに来る低めの変化球を逃さないこと。低めに手を出せば、内野への併殺打のリスクもある。が、狙いが明確なら迷わずにスイングできる。二つ目の準備が、絶好機ではまった。
「悔しい気持ちをバネにして、厳しい練習を乗り越えてきたかいがあった」。チームの気持ちを代弁するように言った。
青森山田には、今春の選抜大会1回戦でサヨナラ負けした。相手の先発投手が関だった。仲間とともにビデオを繰り返し見て闘争心をかきたてた。だから、準決勝の相手が決まった時、そして六回に借りを返すべき相手がマウンドに立った時、どちらも気持ちは適時打の時と同じ。来た、だ。
もともとは投手もこなしたが、選抜大会後は野手専門に。甲子園で投げる夢は、同じ2年で仲のいい西村一毅に託した。五回からマウンドに上がった背番号11に「取れるアウトは絶対に取る。思い切って投げてこい」と激励。六回、右翼からの好送球で一塁走者を三塁で刺し、友のピンチを救った。
少しあがり症だが、夢中で戦った5試合は緊張する暇もなかったようだ。「楽しんでできました」。甲子園で、一回り頼もしくなった。（山田佳毅）
