Smiley face
藤本さんが可愛がるインコの「ピーちゃん」。お気に入りは頭の上だ=2024年5月、神戸市
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 多くの人が寝静まる平日午前2時、神戸市のデイトレーダー藤本茂さん(88)の一日が始まる。

 まず、ストレッチで体をほぐしてからコーヒーをいれ、三つのパソコンモニターのスイッチを入れる。米国市場の状況を確認し、新聞や決算資料を読みながら、日本市場の方向性を予測し、取引する銘柄を絞り終えた。

 「今日は、売り相場やな」

 日本市場が開く午前9時。株価上昇を見込んで売却の注文を出した銘柄の売買成立を知らせるアラーム音が次々と鳴る。モニターは取引ごとに、数十万円の利益が出たことを知らせている。

 「9時台が一番忙しい」とぼやきながら、人さし指一本でキーボードを打って注文を出すが、時折打ち間違えて「エラー」の文字。「売りと買いを間違えたら、えらいこっちゃ。でもたまにやってしまうがな」とモニターとキーボードに目をこらす。

「目標はバフェット」 帽子は修繕

 売買の記録は、手元のノートに書き込んでいく。「チリも積もれば山となるってやつだ」。積み上げてきた資産は今年初めて20億円を超え、自己最高記録を更新中だ。

 「あと1桁は増やしたい。目標は(米著名投資家の)ウォーレン・バフェットやな」

 数字の目標はあっても、お金を使ってぜいたくをしたい気持ちはない。携帯も車も持たない。着ている服も少しよれている。15年ほど前に数千円で買った愛用の帽子は、妻にほつれを修繕してもらいながら使っている。

 体の衰えも隠せない。これまで散歩で体を鍛えてきたが、今年に入ってぎっくり腰になり、トイレに行くにも杖が必要になった。2月には2度目の脳梗塞(こうそく)になり、ノートに取引を書くスピードも落ちた。目が疲れてモニターの文字が見えにくい時は、虫眼鏡を使う。

 それでも衰えは宿命と受け入れ、「速記を覚えて速くノートを書ければもっと取引できるようになる。衰えながらもトレードスタイルは進化している。自己採点はまだまだ75点」と前を見る。

これだと思ったら、突き進め

 失敗するかもしれないが、これだと思うものがあれば突き進む。そこに年齢は関係ない――。そんな哲学で人生を駆け抜けてきた。

 投資を始めたのは高校卒業後…

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