夢洲から
大阪・関西万博のイタリア館に併設されたステージでライブが開かれると聞き、開演15分前に訪れた。ただ、周りにいるのは、芸術品を見ようと入館の列に並ぶ人と、ジェラート目当てに売店に並ぶ人ばかり。
誰も集まらないんじゃないかとはらはらしたが、始まると、エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)にのせた力強い歌に道行く人は足を止め、踊り出した。最初は戸惑っていた人たちも手拍子。野外フェスさながらの熱気を帯びた。
ライブの主(あるじ)は、イタリアから初来日したミュージシャンでDJのサラフィーネさん。2023年にテレビのオーディション番組で優勝し、人気が高まっているという。
万博会場には、デジタル技術を駆使した目を見張るような映像展示があふれている。そんな中だからこそ、生演奏や食べ物など「生(なま)」に触れる機会は、強く印象に残る。
その点、イタリア館はたけている。カラバッジョ「キリストの埋葬」の原画を展示するなど人気を集めるのも納得だ。
サラフィーネさんは自然豊かな南部カラブリア州出身。ライブの後に故郷の話を聞くと、「温かく、自分の心に正直に動く人が多い」という。大阪に似ているのだそう。
どんなところだろう。想像を巡らせた。やはり、いつか現地で「生」に触れなくては、と思った。
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世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。